愛犬が年齢を重ね、最近あまり水を飲まなくなったと感じると、心配になりますよね。
そんなとき、
「このまま脱水にならないのだろうか?」
「何かの病気のサインなのでは?」
といった不安を感じてはいませんか?
老犬が水をよく飲む場合は、病気のサインであることが少なくありません。
しかし、老犬が「水を飲まない」場合も、病気が隠れている可能性があることをご存じでしょうか?
本記事では、老犬が水を飲まない原因や疑われる病気、脱水の見分け方、正しい対処法について、獣医師がわかりやすく解説します。
最後までお読みいただき、老犬が水を飲まないときについて理解を深めましょう。
老犬が水を飲まなくなる6つの主な原因

まず、老犬が水を飲まなくなる原因には、以下のようなものがあります。
①加齢による変化
②ストレス
③飲み水の環境が合っていない
④食事内容の変化
⑤季節
⑥病気
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①加齢

老犬になると、加齢の影響で体の様々な機能が低下していきます。
その影響で、喉の渇きを感じにくくなるほか、筋力の低下や関節の衰えにより移動自体が負担となり、水を飲む回数や量が自然と減ってしまうことが珍しくありません。
その結果、脱水が置きてしまうこともあるので、放っておかずに飲水量を増やす工夫をすることが大切です。
②ストレス

老犬になると環境の変化に敏感になり、ストレスから水を飲まないことがあります。
年齢とともに嗅覚や聴覚といった五感が徐々に低下していき、感情のコントロールもこれまでのようにできなくなっていくからです。
ストレスの要因は個体差がありますが、以下のようなものが一般的なものとして挙げられます。
- 留守番時間が長い
- 引っ越しをした
- 家族構成が変化した
- 新しいペットを迎えた
- ペットホテルに預けられた
これまでは平気だったようなこともストレスに感じてしまうことがあるので、できるだけ老犬が落ち着ける環境を維持することが大切です。
③飲み水の環境が合っていない

老犬は、日常の些細な変化にも敏感です。水を飲むことが大変だと感じることで、結果的に水を飲まなくなるケースも少なくありません。
例えば、水飲み場の位置やお皿の高さが愛犬の状態に合っていないときなどがそうです。
年齢とともに足腰が弱くなるので、これまでと同じ高さでは飲みづらくなってしまうことがあります。
また、普段寝ている場所から水飲み場までが遠ければ、動くのが億劫になってしまい水を飲むのを我慢してしまうでしょう。
そのほか、器の素材を変更したり、水温が冷たすぎるなどの理由で水を進んで飲まなくなる老犬もいます。
④食事内容の変化

今までドライフードがメインだった食事から、ウエットフードなどの水分量の多い食事に変えると、食事から水分を十分に摂取できるため、水を飲まなくなることがあります。
老犬が水を飲まないときは、食事内容を変更していないか確認してみるといいでしょう。
⑤季節の変化

夏は気温が高く、体が必要とする水分量も増えるため、老犬は水をよく飲みます。
しかし、冬になると気温が低下し、必要な水分量も減少するため、自然と水を飲まなくなります。
また、寒さにより水が冷たいと感じることで、水を飲まなくなることもあります。
⑥病気

老犬が水を飲まない背景に、さまざまな病気が隠れていることも少なくありません。
特に、口の痛みや吐き気を引き起こす病気が原因で、水を飲まなくなることがあります。
また、水を飲まない以外にも体調の変化がある場合は、特に注意が必要です。
老犬が水を飲まないときに考えられる病気

では、老犬が水を飲まないときには、どのような病気が考えられるのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
- 慢性腎臓病
…慢性腎臓病は、加齢とともに腎臓の機能が低下する病気です。初期では水をよく飲みますが、進行すること吐き気を感じやすくなり、水を飲めなくなることがあります。 - 消化器疾患
…炎症や腫瘍などのさまざまな消化器のトラブルで吐き気があるときも、水を飲まなくなることがあります。 - 口腔内疾患
…歯周病や口腔内腫瘍などで口の中に痛みがあると、水を飲むことが刺激となるため、水を飲まなくなることがあります。 - 神経疾患
…犬が水を飲む際に、舌や喉を動かすためには「神経」の働きが必要です。脳や神経の異常により、水を飲むという行動自体が難しくなり、水を飲まなくなることがあります。 - 整形疾患
…老犬では、椎間板ヘルニアや膝蓋骨脱臼などから起こる関節炎がよく見られます。そのような関節の痛みにより、移動することが難しくなり、結果的に水を飲まなくなることがあります。
これらは、私自身の日頃の診察においてもよく見られる病気です。
少しでも気になる症状がある場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
老犬に必要な1日の水分量

一般的に、犬の1日の水分摂取量は体重1kgあたり約50mLが目安とされています。
例えば体重5kgの老犬であれば、約250mLが適正な飲水量ということです。
ただし、飲水量は食事内容によって大きく変動します。
そのため、飲水量のみではなく、ウエットフードなどの水分量も含めた1日のトータルの水分摂取量で判断することが大切です。
【良かれと思ってやってない?】老犬の水分補給で飼い主がやりがちな5つの間違い

愛犬に水分をたっぷり摂取させようとしたときに、よくやりがちな間違いがいくつかあります。
これらは日頃の診察でもよく見かけることで、場合によっては愛犬の体調をより悪化させてしまう可能性があり、注意が必要です。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①無理やり水を飲ませる

シリンジやスポイトなどで、強制的に水を飲ませていませんか?
この方法は、私自身の診察の中でもよく聞く間違いですが、やり方を誤るととても危険です。
特に、喉の奥に無理やり注ぎ込むように与えると、愛犬が上手く飲み込むことができず、誤嚥する可能性が高まります。
嫌がる場合は、無理せずほかの方法を試してみましょう。
②水を飲まないのに様子を見すぎる

愛犬が水を飲まなかったとしても、「そのうち飲むだろう」と様子を見ることは避けましょう。
病気が原因で水を飲まない場合だと、放置すると脱水や病状が進行する可能性があります。
水を飲まないこと以外に、愛犬の様子に変化がないか確認することが大切です。
③水にこだわるあまり工夫しない

愛犬が水を飲まないとき、つい「水を飲ませる」ことに意識が向きがちです。
水を飲まない場合でも、ウエットフードなどを用いて食事から水分を補う方法があります。
また、犬用の経口補水液など、水道水以外のペット用品を使うことも一つの方法です。
私自身の経験としても、これらは意外と思いつきにくい方法だと感じています。
④古い水・汚れた水をそのままにする

老犬はにおいに敏感で、水が古いと飲まなくなることがあります。
また、老犬が古い水や汚れた水を飲んでしまうと体調を崩す可能性もあるため、注意が必要です。
⑤飲水量を把握していない

具体的な飲水量を把握していないと、異常の発見が遅れる原因になります。
実は、見た目以上に十分な水分が取れていなかった、ということも少なくありません。
老犬の飲水量を把握するには、
- 朝に計量した水をお皿に用意し、翌日同じ時間に残量を測る
- ペットボトルに計量した水を用意し、一日で減った量を測る
- 給水ボトルの目盛を使用し、一日で減った量を測る
といった方法を行うことで、どれくらい水を飲んだか測定することができます。
老犬が水を飲まないときの対処法

では、老犬が水を飲まないときは、どのように対処すればよいのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①体調チェックをする

まず、愛犬がなぜ水を飲まないかを考えてみましょう。
第一に確認したいのが、体調の変化から水を飲まなくなっていないか、ということです。
特に、
- ぐったりしていないか?
- 食欲はあるか?
- 下痢はしていないか?
- おしっこの量や回数、色に異常はないか?
といった点を確認し、異常があれば早めに受診しましょう。
②飲みやすい環境に整える

次に、愛犬にとって水が飲みにくい環境になっていないか確認しましょう。
もし飲みにくそうであれば、
- お皿を複数箇所に置く
- 寝床の近くに置く
- 高さのある食器に変える
- 滑らない場所に置く
といった工夫をすることで、水を飲むようになるかもしれません。
③水の状態を見直す

水が古くなっているようであれば、こまめに新鮮な水に交換し、いつでも飲めるように用意してあげましょう。
飲み水の交換は、最低限1日1回は行うことが一般的です。
また、冷たい水ではなく常温からぬるめの水にすると、飲む場合もあります。
④食事から水分を補う

液体の水で飲まない場合は、食事から水分を補う方法もあります。
その方法としては、
- ウエットフードを使う
- ドライフードをふやかす
- 水分補給のおやつを使う
といった方法があります。
愛犬の好みに応じた方法を選んであげましょう。
⑤嗜好性を上げる

単純な水道水では愛犬が水を飲んでくれない場合は、少し風味をつけて嗜好性を高めることで飲んでくれることがあります。
具体的には、犬用ミルクを少量加える、茹で汁を混ぜるといった方法があります。
ただし、ミルクを大量に加えたり、硬水のミネラルウォーターを使用したりすることは、尿石症のリスクにつながるため避けましょう。
⑥飲水をサポートする

体の痛みなどにより、自分で水を飲むことが難しい場合は、
- スプーンで口元に持っていく
- 手で体を優しく支える
- 指につけて舐めさせる
といった方法で、飲水をサポートしてあげましょう。
ただし、無理やり飲ませることは誤嚥につながる可能性があるため、注意が必要です。
水を飲まない老犬にシリンジを使う(強制給水)ときの注意点

愛犬が水を飲まないときに、シリンジ(注射器)を使用して水を飲ませる場合は、慎重に行う必要があります。
具体的には、
- 少量ずつゆっくり与える
- 横から流し込むようにする
- 嫌がる場合は中止する
といったことに注意が必要です。
特に、ぐったりしている場合に無理に行うと、誤嚥のリスクが高まるため、自己判断では行わないようにしましょう。
老犬の脱水症状をチェックする方法

では、愛犬が水を飲まないときに、脱水が起きているかを確認するには、どうしたらよいのでしょうか?
犬が脱水している場合は、
- 口の中や歯ぐきが乾いている
- 皮膚をつまんでも戻りが遅い
- 目がくぼんでいる
といった様子が見られることがあります。
ただし、脱水していてもこれらの様子が見られないこともあるため、獣医師に確認してもらう方が安心です。
老犬が水を飲まないときに動物病院を受診すべき目安

では、愛犬が水を飲まないとき、どのような様子が見られたら受診すべきなのでしょうか?
受診の目安として、
- 半日〜1日以上水を飲まない
- 元気がない
- 食欲がない
- 嘔吐や下痢がある
- 脱水症状がある
- 痛みがある
- 震えている
といった症状が見られる場合は、病気が原因で水を飲まない可能性があり、老犬では体調の悪化が急に起こることもあるため、迷ったら受診する方が安心です。
まとめ|老犬が水を飲まないときは「様子見しすぎない」が重要

老犬が水を飲まない原因には、食事や環境の変化といった問題のないケースもあれば、病気が原因のケースもあります。
特に、水を飲まない以外の症状がある場合は、動物病院を受診するよう心がけましょう。
老犬が水を飲まないときは、その理由を見極めること、自然に水分を取れる工夫をすることが大切です。
日頃から飲水量や体調を観察し、小さな変化に気づくことが、愛犬の健康を守る第一歩になります。


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