【獣医師執筆】腎臓病の老犬が食べてはいけないものと食事管理の注意点

老犬になると増えてくる病気の一つに「腎臓病」が挙げられます。

愛犬が腎臓病と診断されたとき、どのような食事管理を行うべきか悩みますよね。

そんなとき、

「食べさせてはいけないものって何だろう?」
「早めに療法食を与えた方がいいのかな?」
「療法食を食べないときはどうしたらいい?」

といった疑問をお持ちではありませんか?

実は、腎臓病の老犬が食べてはいけないものは、身近にたくさんあります。

また、療法食も使用するタイミングによっては、愛犬の健康を損ねる可能性があるため注意が必要です。

この記事では、腎臓病の老犬が食べてはいけないものやその理由をはじめ、食事管理のポイントや療法食の注意点などを獣医師が分かりやすく解説します。

最後までお読みいただき、腎臓病がある老犬の食事管理について理解を深めましょう。

浅川雅清
獣医師

獣医師国家資格 / 動物介護士 / 犬の管理栄養士マスター / 日本獣医腎泌尿器学会認定医(2026年4月~) / Hillsフードアドバイザープログラム修了 / ノビバックワクチンアドバイザープログラム修了

浅川 雅清

獣医師歴10年。2016年4月から東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務。分院にて院長として勤務した後、フリーランスとして独立。現在は診療業務の他、往診や記事作成、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行う。

目次

腎臓病の老犬が食べてはいけないもの一覧

腎臓病のシニア犬

腎臓病の老犬では、腎臓に負担をかける栄養素を過剰に摂取しないことが重要です。

特に注意したい栄養素として、

  • タンパク質
  • リン
  • カリウム
  • 塩分

が挙げられます。

ただし、これらの栄養素は体にとって必要な成分でもあるため、過度に制限しすぎないように注意しましょう。

では、具体的にはどのような食べ物に、これらの成分が多く含まれているのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

高タンパクな食べもの

たんぱく質が多すぎるシニア犬の食事

老犬の腎臓病では、タンパク質の代謝で発生する老廃物を、尿中に排出しにくくなります。

そのため、過剰なタンパク質の摂取は腎臓に負担をかけることが少なくありません。

高タンパクな食べ物を、以下の表にまとめました。

食材たんぱく質量
(100gあたり)
煮干し約64g
砂肝約18〜20g
鹿肉約22g
馬肉約20〜21g
猪肉約18〜20g
鶏肉(むね皮なし)約23g
牛肉約17〜21g
豚肉約18〜22g
ラム肉約17〜20g
レバー約18〜20g
チーズ約20〜25g
卵黄約16g

※部位や加工状態によって数値は変動します。
※参考:食品成分データベース

このように、タンパク質が多く含まれる食べ物は、主に肉類や卵、乳製品です。

タンパク質は通常、筋肉や皮膚など体を作る材料や、エネルギー源として利用されています。

そのため、上記の食べ物以外にも、犬の筋肉をサポートするサプリメントなども高タンパクの設計になっていることがあるので注意が必要です。

リンが多い食べもの

おやつを食べるシニア犬

腎臓の機能が低下するとリンが尿中に排泄されにくくなり、体内に蓄積してしまいます。

体内にリンが蓄積すると、さらなる腎機能の悪化や骨の代謝異常などが引き起こされることが珍しくありません。

リンが多い食べ物を、以下の表にまとめました。

食材リン含有量
(mg/100gあたり)
煮干し約1500mg前後
しらす干し約860mg
かつお節約760mg
レバー(豚・鶏)約300〜400mg
砂肝約200mg前後
チーズ約500〜700mg
卵黄約500mg
鹿肉約200mg前後
馬肉約200mg前後
牛肉約170〜200mg
鶏肉約180〜220mg
豚肉約170〜220mg

※部位や加工状態によって数値は変動します。
※参考:食品成分データベース

このように、リンが多く含まれる食べ物は、主に魚や肉類になります。

日頃、このような食べ物をおやつやトッピングとして使用している場合は、注意が必要です。

とはいえ、リンはカルシウムに次いで体内に多く存在する重要なミネラルで、骨や歯の形成、エネルギー代謝などに不可欠な栄養素です。

摂りすぎは避けたほうがいいですが、獣医師の栄養制限の指示がない場合は過剰な制限はしないように注意しましょう。

カリウムが多い食べもの

バナナとシニア犬

腎臓病では、リンと同様にカリウムも尿中へ排泄されにくくなることがあります。

病期によっては低カリウム血症になることもありますが、進行すると高カリウム血症になるケースもあり、自己判断でカリウムを多く含む食べ物を与えるのは危険です。

血中のカリウムが高くなると、不整脈などの症状が現れることも少なくありません。

カリウムが多い食べ物を、以下の表にまとめました。

食材カリウム含有量
(mg/100gあたり)
バナナ約360mg
さつまいも約470mg
じゃがいも約410mg
かぼちゃ約430mg
ほうれん草約690mg
枝豆約590mg
納豆約660mg
海藻類約500mg以上

※部位や加工状態によって数値は変動します。
※参考:食品成分データベース

このように、カリウムが多く含まれる食べ物は、主に果物や豆類、海藻類となります。

カリウムは通常、体内の水分バランスや神経伝達を正常に保つ役割を担っていますが、体内で過剰になったり、逆に不足したりすると、体調に異変をきたすことが少なくありません。

そのため、こうした食材を与える場合は獣医師に確認してから与えましょう。

塩分が多い食べもの

チーズを食べるシニア犬

塩分の過剰摂取は、高血圧を引き起こす可能性があります。

高血圧は、腎臓に負担をかける可能性があるのはもちろんのこと、腎臓病によく併発する「心臓病」にも悪影響を及ぼすことも少なくありません。

塩分が多い食べ物を、以下の表にまとめました。

食材食塩相当量
ハム約2.5g
ソーセージ約2g
ベーコン約2g
ちくわ約2〜3g
かまぼこ約2.5g
チーズ約1.5〜3g
煮干し約4〜6g

※部位や加工状態によって数値は変動します。
※参考:食品成分データベース

このように、塩分が多く含まれる食べ物は、主に加工食品となります。

ナトリウムは、カリウムと同様に体内の水分バランスや神経伝達を正常に保つ役割を担っています。

通常であれば余分なナトリウムは尿と一緒に排出されますが、腎臓病の場合は負担がかかってしまうことも。

老犬では、飼い主様が食欲増進目的でチーズやハムなどを与えてしまうケースもありますが、塩分が高いため注意しましょう。

その他に注意したい食べ物として、犬用のジャーキー系のおやつは、タンパク質やリン、カリウムが多く含まれる可能性があります。

また、ビタミン系の人間用サプリメントを与えている場合も、カリウムやリンなどのミネラル成分が多く含まれている可能性があるため、注意が必要です。

腎臓病の老犬の食事管理が重要な理由

出展:IDEXX 国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)の慢性腎臓病ガイドライン

老犬の腎臓病を研究しているグループに、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)があり、そこから犬の慢性腎臓病のステージ分類が提唱されています。

そのステージ分類に基づく治療ガイドラインでは、慢性腎臓病のステージ2の段階から食事療法が推奨されています。

つまり、腎臓病にとって食事管理は、治療として推奨されるくらい大切なものなのです。

では、腎臓病において食事管理を行うべき理由とはどのようなものなのでしょうか?

その理由を詳しく見ていきましょう。

腎臓病になると老廃物をうまく排出できなくなる

例えるなら腎臓は、血液をろ過して体に必要なものと不要なもの(老廃物)を分ける精密なフィルターのようなものです。

腎臓病になると、このフィルターの目が詰まったり壊れたりして、排出できる老廃物の量が減少します。

そのため、入り口となる食事の段階で、老廃物のもとになる成分をコントロールする必要があります。

まずは食事から摂取するタンパク質やミネラルの量を調節することにより、腎機能をサポートすることが一般的です。

リン制限は腎機能悪化を遅らせる可能性がある

IRISのステージ分類では、各ステージにおける目標とすべき血液中のリンの数値が定められています。

それくらい、慢性腎臓病ではリンの管理が非常に重要です。

血液中のリンが高い状態が続くと、腎臓にさらなるダメージを与えることが知られています。

そのため、腎臓病用の療法食では、リンの量が制限されていることが一般的です。

水分摂取も重要になる

一般的に腎臓病では、薄い大量の尿が作られるため、脱水傾向になります。

特に老犬では、のどの渇きを感じにくくなり飲水量が低下することから、より脱水傾向が強くなることが多いです。

また、水分不足は腎臓への血流の低下を招き、さらに腎機能を悪化させる原因となりかねません。

そのため、フードをふやかす、ウェットフードを活用するなどの工夫を行い、水分摂取を促すことも大切です。

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【注意!】腎臓病の老犬に自己判断で療法食を与えない

では、愛犬が年齢を重ね、腎臓の健康が心配になっていた場合は、自己判断で腎臓病用の療法食へと切り替えた方が良いのでしょうか?

実際、血液検査で腎臓の数値が正常値を外れたからといって、獣医師の指示がないのに自己判断で療法食を与える飼い主様もいます。

結論から申し上げますと、自己判断で療法食を与えるのはとても危険です。

最悪の場合、愛犬の健康を損ねる可能性も否定できません。

その理由を詳しく見ていきましょう。

腎臓病の状態によって食事の対応は異なる

まず腎臓病では、病気の進行具合によって必要な食事管理の内容が異なります。

特に老犬では、過度なタンパク制限により筋肉量が低下するリスクもあるため、初期では厳しすぎる制限を行わないケースも少なくありません。

一方、病気が進行するにつれて、さらにリンやナトリウム、タンパク質を制限するようになります。

具体的な商品を例にとって、以下の表で比較してみましょう。

 ロイヤルカナン
早期腎臓サポート
ロイヤルカナン
腎臓サポート
リン含有量約0.13g約0.05g
タンパク質量約5.7g約3.5g

※100kcalあたり

しかし、これらの療法食を選ぶためには、まずは動物病院を受診し、正確な診断を受ける必要があります。

実際に動物病院では、

  • 血液検査
  • 尿検査
  • 画像検査(レントゲンやエコー検査)
  • 血圧検査

などをもとに、腎臓病が起きているか、どのような食事管理が必要かを獣医師が総合的に判断します。

自己判断で療法食に切り替えるリスク

自己判断で健康な犬や、診断が確定していない老犬に療法食を使用すると、最悪の場合愛犬の健康を損ねる可能性があるため、絶対に避けましょう。

腎臓病の食事管理は、老犬の体調に応じて細かく調節が行われます。

そのため、もし適切な食事管理が行われていない場合、

  • 本来必要な栄養が不足する
  • タンパク質の制限により筋肉量が低下する
  • 嗜好性の低下から食欲が低下する

といった悪影響を引き起こすことが少なくありません。

また、日本獣医師会でも、療法食の適正使用について注意喚起されています。(※)

参考:日本獣医師会小動物臨床部会「療法食の適正使用に向けた課題と対応」

腎臓病の老犬が食べないときはどうする?

では、もし腎臓病の老犬が食事を食べなくなった場合は、どのように対処したら良いのでしょうか?

老犬が食事を食べなくなった場合は、

  • 与え方を工夫する
  • 体調を確認する
  • 「食べること」を優先する

といった対処を行うと良いでしょう。

では、それぞれの対処法を詳しく見ていきましょう。

療法食を食べないときの工夫

腎臓病用の療法食は、タンパク質やリンが制限されているため、風味が控えめで食いつきに悩むケースが多々あります。

そのため、

  • お湯でふやかす
  • ウェットフードを併用する
  • 腎臓病対応のトッピングを少量使う
  • 食べやすい食器に変える
  • 少量をこまめに与える

といった工夫を行い、香りを立たせるだけでも食欲が改善することがあります

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腎臓病で食欲が低下することも

元気がないシニアのMIX犬

腎臓病の老犬で療法食を食べないときは、場合によっては腎臓病が進行し、食欲不振の症状が出ている可能性があります。

腎臓病が進行すると、吐き気や口内炎、貧血などの症状が現れ、食欲が低下することも少なくありません。

単なる「わがまま」と決めつけず、早めに受診することが重要です。

早急に動物病院を受診すべきサイン

24時間以上食べない
水も飲まない
嘔吐や下痢をしている
ぐったりしている
体重が減少している
口臭が強い

食欲が低下するほかに、上記のような症状も見られる場合は、腎臓病が進行している可能性があるため早急に動物病院を受診しましょう。

老犬では「食べること」を優先する場合もある

腎臓病が進行している場合や超高齢犬では、厳密なタンパク・リンの制限より「食べること」を優先するケースもあります。

その理由は、まったく食べない状態が続くと、低栄養による体力や体重の低下が進行する可能性があるからです。

そのような場合は獣医師の判断のもと、無理に療法食だけを続けず、一時的に嗜好性を優先することも少なくありません。

ただし、自己判断せず必ず一度動物病院に相談のうえ、食事管理を行うようにしましょう。

まとめ|腎臓病の老犬が食べてはいけないものは状態によって違う

ごはんを食べるシニア犬のコーギー

腎臓病の老犬では、タンパク質やリン、カリウム、塩分などを過剰に摂取しないことが、食事管理としてとても重要です。

しかし、すべてを一律に制限するわけではなく、病気の進行度や食欲、筋肉量などを総合的に考慮しながら食事管理を行う必要があります。

特に老犬では、厳しすぎる制限によって低栄養や筋力低下を招くことも少なくありません。

また、誤った療法食の使い方で、愛犬の健康を損ねる可能性もあります。

自己判断で療法食へ切り替えるのではなく、必ず獣医師と相談しながら、その子に合った食事内容を選ぶようにしましょう。

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この記事を書いた人

浅川 雅清のアバター 浅川 雅清 獣医師

2016年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。
同年よりペットショップ併設の動物病院にて勤務。
犬・猫・うさぎ・ハムスターの診察を中心に、ペットショップの生体管理や採用業務、ペット用品の開発に携わる。
1年間の院長経験を経て、2024年よりフリーランスとして独立。
現在は診療業務の他、オンラインでの医療相談、往診、コラム作成、SNS監修、多数の商品監修などを行っている。

【保有資格】
獣医師国家資格 / JADP認定動物介護士(R) / 犬の栄養管理士マスター / 日本獣医腎泌尿器学会認定医(2026年4月~)/ Hillsフードアドバイザープログラム修了 / ノビバックワクチンアドバイザープログラム修了

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