【獣医師執筆】シニア犬の膵炎対策|食事管理とおすすめ食材を徹底解説

愛犬がシニア期に入り、突然膵炎と診断された場合、食事管理に悩んでしまいますよね。

膵炎は、加齢により消化機能が低下したシニア犬ではよく見られる病気ですが、

「膵炎ではどんな食事を与えるべき?」
「そもそも膵炎って何?」
「治療後はどんな食材に気をつけたらいいの?」

といった疑問をお持ちではありませんか?

実はこの病気、日々の食事内容が発症や再発に大きく影響するため、食事管理がとても大切です。

本記事では、シニア犬に膵炎が起きる原因や正しい食事管理のポイント、おすすめの食材、与え方まで、獣医師がわかりやすく解説します。

最後までお読みいただき、愛犬が膵炎と診断された際の正しい食事管理について理解を深めましょう。

浅川雅清
獣医師

獣医師国家資格 / 動物介護士 / 犬の管理栄養士マスター / 日本獣医腎泌尿器学会認定医(2026年4月~) / Hillsフードアドバイザープログラム修了 / ノビバックワクチンアドバイザープログラム修了

浅川 雅清

獣医師歴10年。2016年4月から東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務。分院にて院長として勤務した後、フリーランスとして独立。現在は診療業務の他、往診や記事作成、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行う。

目次

シニア犬は注意!膵炎で食事管理が重要な理由

膵炎とは、脂肪を消化するための消化酵素を作る「膵臓」という臓器で、何らかの原因で消化酵素が膵臓そのものを消化してしまい、炎症を引き起こす病気です。

シニア犬では、消化機能や代謝機能が低下しているケースが多いため、成犬と比べ膵炎になりやすく、また治療にも時間がかかることも珍しくありません。

重症化すると命にかかわることもあり、シニア犬では特に注意が必要です。

そのため、日頃から食事管理を行って対策することがとても重要になります。

まずは、膵炎の原因とその対処法を見ていきましょう。

①膵炎の原因

膵炎の主な原因には、

  • 高脂肪食の摂取
  • 肥満
  • 誤食(人間の食べ物など)

などが挙げられますが、はっきりと原因がわからないケースも少なくありません。

特にシニア犬では、高脂血症や甲状腺機能低下症、クッシング症候群糖尿病といった病気の影響を受けて、膵炎が起こりやすくなることも知られています。

また、膵炎が起こりやすい犬種としては、ミニチュアシュナウザーやヨークシャーテリアなどが挙げられます。

②膵炎の症状

膵炎を疑う症状としては、

  • 激しい嘔吐や下痢
  • 食欲不振
  • 元気消失
  • 痛みによる祈りのポーズ

といったものが挙げられます。

また、犬の膵炎には「急性膵炎」と「慢性膵炎」の2種類があります。

急性膵炎は突然発症し、症状が強く現れることが特徴ですが、慢性膵炎は軽度の炎症が長期間続き、症状が出にくく気づきにくいことも少なくありません。

祈りのポーズとは


犬の「祈りのポーズ」とは、前足と胸を床につけ、お尻だけを高く上げる姿勢のことです。

ちょうど「お辞儀」や「伸び」をしているように見えるため、こう呼ばれています。

この姿勢をとる場合は、腹部の痛みを和らげようとしている可能性があります。

膵炎では、腹部に強い痛みが生じることが多く、この姿勢が見られることが少なくありません。

②膵炎の対処法

では、膵炎を疑うような症状が見られた場合、どのような対処を行えばよいのでしょうか?

前述のような症状が見られた場合は、自己判断せず早急に動物病院を受診し、どのような治療を行うか指示を受けましょう。

一般的に動物病院で膵炎と診断された場合は、点滴やお薬による治療が行われます。

症状が軽度であれば、2~3日程度の通院による治療が行われることがありますが、重度であれば1週間ほどの入院による治療が行われることも少なくありません。

また、初期には絶食が指示されることがあります。

これは膵臓を休ませるために行うもので、通常は半日~1日程度の絶食が目安です。

その後、愛犬の状態を見ながら少量ずつ食事を再開しますが、再発防止のために、後述する低脂肪の食事を使用します。

これらの治療は、愛犬の状態により細かな調節が必要であるため、自己判断による食事の変更や投薬の中止は厳禁です。

シニア犬が膵炎のときの食事選びのポイント

シニア犬で膵炎を発症した場合は、これからの食事選びは慎重に行う必要があります。

膵炎の食事管理で最も重要なのは「膵臓に負担をかけないこと」です。

具体的な方法を詳しく見ていきましょう。

①低脂肪の食事を選ぶ

平均的な総合栄養食における脂質は13〜15%程度の含有量ですが、膵炎用の低脂肪の療法食では、乾物値で10%以下の量に制限することが目安とされています。

乾物値とは

フードから水分を完全に取り除いた栄養成分の数値のこと。水分量に関係なく正確な栄養濃度を算出できる。

【計算方法】
フードの脂質量 ÷(100-フードの水分量)× 100 = 乾物値における脂質量

膵臓は脂肪を消化する消化酵素を作る臓器であるため、脂肪分の多い食事は膵臓への負担が大きく、膵炎が再発するリスクを高める可能性があります。

そのため、膵炎を予防のためには、日頃から低脂肪の食事を意識することが重要です。

②良質なたんぱく質を摂取する

シニア犬の膵炎の食事では、脂質が少なく良質なたんぱく質が含まれている食事を与えましょう。

脂質を制限した場合、その分栄養素やカロリーが低くなることが少なくありません。

そのため、脂質が少なく、かつ良質なたんぱく質でカロリーを補うことが重要です。

良質なたんぱく質とは、アミノ酸などの栄養がバランスよく含まれ、体内で効率よく利用されるたんぱく質です。

具体的な食材としては、

  • 鶏肉
  • 牛肉
  • 豚肉

などが挙げられます。

特にシニア犬では消化機能も低下していることが多いため、良質なたんぱく質を摂ることが大切です。

ただし、脂質は消化に負担がかかりやすくなるので、豚バラ肉や牛肉など脂身の多いものは避けましょう。

シニア犬が膵炎のときの食事の与え方

シニア犬が膵炎になった場合は、消化に負担をかけないように、食事量と回数にも注意が必要です。

どのような工夫をすれば良いのか、それぞれを詳しく見ていきましょう。

①与える量

膵炎を発症した直後の食事は、通常の食事量の50〜70%程度からスタートし、ゆっくりと増やすように心がけましょう。

一度に多くの食事を与えると、消化しにくいのはもちろんのこと、膵臓に負担がかかることが少なくありません。

そのため、一度に与える食事の量は少量を基本とし、回数を多くすることで一日に必要な量を与えます。

そのためにも、日頃から与えるドッグフードの量を正確に測っておくと、調節がしやすいのでおすすめです。

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②与える回数

シニア犬の膵炎では、食事を与えるときに3〜5回に分けて与えるのが理想です。

通常の1〜2回の食事よりも少量かつ頻回にすることで、膵臓や消化管への負担を軽減することにつながります。

何回に分けるか迷ったときは、以下の記事を参考にしてください。

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③消化しやすい形状と温度

食事の量や回数はもちろんのこと、フードを消化しやすく工夫することも大切です。

具体的には、ドライフードをぬるま湯でふやかす、ウエットフードを使用する、といった工夫が挙げられます。

特にシニア犬では脱水しやすく、食事と同時に水分補給をすることで、膵炎の再発予防にもつながります。

また、冷たい食事は消化機能を低下させる可能性があるため、35〜40℃程度の人肌の温度まで温めてから与えることがおすすめです。

食事は冷たすぎず、熱すぎない温度で与えるようにしましょう。

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シニア犬が膵炎のときにおすすめの食事

シニア犬が膵炎のときは、低脂肪で消化に良い食事がおすすめです。

動物病院で処方される低脂肪の療法食をベースに、食べないときは脂質の低い良質な食材をトッピングに使っていきましょう。

実際に、私自身の経験を踏まえてそれぞれを解説します。

①低脂肪の療法食

シニア犬が膵炎のときは、まず動物病院で処方される低脂肪の療法食を試すのが最も一般的です。

経験上、近年では嗜好性が高く比較的食べやすい製品が多く、特に小粒で食べやすい療法食や、ウエットタイプの療法食では、食欲が落ちているシニア犬でも受け入れやすい傾向があります。

また、病院で処方される療法食であれば、成分がきちんと分析されているため安心して使用することができます。

具体的な成分の違いを以下の表にまとめました。

低脂肪の
療法食
一般的な
総合栄養食
たんぱく質26.1 %24.3 %
脂質8.9 %15.5 %
炭水化物56.7 %52.6 %
粗繊維2.3 %1.4 %

近年では、総合栄養食のなかでも脂質が低いものもありますが、使用する際は自己判断せず、一度獣医師に相談するよう心がけましょう。

②手作りレシピ

もし療法食の食いつきがいまいちである場合は、低脂肪で消化に優しい食材を使用し、トッピングを手作りすることも可能です。

具体的におすすめの食材としては、

  • ささみ
  • 白身魚
  • 白米
  • じゃがいも

といったものが挙げられます。これらは、獣医師が指導する「手作りの超低脂肪食」にも用いられる食材です。

食材の良さをしっかり活かせるように、手作りする際はきちんと加熱しましょう。

ちなみに、キャベツやバナナなどはトッピングとして人気ですが、多すぎる食物繊維は消化を妨げる可能性があるので注意しましょう。また、果物は「果糖」による血糖値上昇のリスクもあります。

以下に、食材のたんぱく質・脂質・糖質・食物繊維量をまとめましたので、参考にしてください。

スクロールできます
食材たんぱく質脂質糖質食物繊維
ささみ約23.0g約1.0g0g0g
白身魚(タラ等)約17.0g約0.2〜1.0g0g0g
白米(炊飯)約2.5g約0.3g約35.0g約0.3g
じゃがいも約1.6g約0.1g約16.0g約1.3g
さつまいも約1.2g約0.2g約30.0g約2.2g
にんじん約0.7g約0.1g約6.5g約2.8g
キャベツ約1.3g約0.2g約3.4g約1.8g
バナナ約1.1g約0.2g約21.0g約1.1g

※参考:食品成分データベース
※数値は一般的な目安です。製品や部位、調理法によって変動します。

また、シニア犬では嚥下機能が衰えていることもあるため、与えるときは細かく刻むなどの工夫も行いましょう

手作り食で注意すべきポイント

低脂肪の食事を完全に手作りする場合は、栄養バランスに注意が必要です。

具体的には、

  • ビタミン不足
  • カルシウム不足
  • リンの過多
  • 必須脂肪酸の不足

といったリスクが手作り食には挙げられます。

そのため、短期的な使用に限定し、獣医師の指導のもとで調整するといった使い方が理想です。

シニア犬が膵炎のときに食べてはいけない食事

前述の通り、膵炎のときは高脂肪の食事や消化に悪い食事は与えないように注意する必要があります。

具体的には、

  • 脂身の多い肉(牛肉・豚バラ肉など)
  • バター
  • チーズ
  • ソーセージやベーコン
  • 揚げ物
  • チョコレート
  • 高脂肪の犬用おやつ

といったものが挙げられます。

もちろん、膵炎のときに限らず、味付けや調理がされた人の食べ物は与えないように注意が必要です。

また、トッピングや手作り食を作るうえで、上記のような食材は避けた方が良いでしょう。

それぞれの食材の比較を以下の表にまとめました。

食材たんぱく質脂質糖質食物繊維
牛バラ肉約14.0g約32.9g0g0g
豚バラ肉約14.2g約35.4g0g0g
バター約0.6g約81.0g約0.2g0g
プロセスチーズ約22.7g約26.0g約1.3g0g
ソーセージ約13.2g約30.6g約3.0g0g
ベーコン約12.9g約39.1g約0.3g0g
ミルクチョコレート約6.9g約34.1g約52.0g約3.9g

※参考:食品成分データベース
※数値は一般的な目安です。製品や部位、調理法によって変動します。

なかでもチョコレートは、脂質以外にも犬に中毒を起こす成分が含まれているので、絶対に与えないようにしましょう。

シニア犬の膵炎に関するQ&A

ここでは、シニア犬の膵炎でよくある疑問をQ&A形式で解説します。

膵炎と腎臓病を併発しているときの食事は?

どちらの病気を優先的に管理するかによって食事内容を調整する必要があるため、一概には言えません。

膵炎の食事管理は低脂肪が基本ですが、腎臓病の食事管理は、低たんぱく・低リンで、脂肪分は高めに調整するケースが多いです。

つまり、膵炎の食事と腎臓病の食事は方向性が異なります。現在のところ、この両方の疾患に完全に対応した市販の療法食はほとんどないでしょう。

そのため、膵炎と腎臓病を併発した犬には、獣医師の判断で必要に応じて療法食の組み合わせやトッピングでの調整が行われることがあります。

飼い主さんだけでは調整が難しいため、自己判断はせず、獣医師と相談したうえで食事管理をするようにしましょう。

膵炎が治ったあとの食事は?

膵炎の症状が落ち着き、治療が終了した後でも、低脂肪を基本とした食事管理は継続することが一般的です。

膵炎は再発することが多いため、治療後であっても脂肪分が高い食事を与えることはおすすめできません。

もし低脂肪の食事を食べてくれない場合は、自己判断せず一度獣医師と相談したうえで、食事管理の方向性を決めましょう。

膵炎の療法食を食べないときは?

低脂肪の療法食を食べない場合は、食べやすくするための工夫を行いましょう。

例えば、

  • ふやかして食べやすくする
  • 温めて香りを出す
  • トッピングを加える
  • 低脂肪のウエットフードを使用する

といった工夫です。

それでも食べない場合は、別の風味やメーカーの療法食を検討してみてください。

膵炎の再発を予防できる食事は?

最も重要なのは「低脂肪の食事を継続すること」です

加えて、おやつやトッピングに関しても、低脂肪の食材を選ぶことが大切です。

また、治ったからといってすぐに低脂肪の食事を中止すると、膵炎が再発することも珍しくありません。

自己判断せず、獣医師と相談しながら食事管理を行っていきましょう。

まとめ│シニア犬の膵炎は食事管理がカギになる病気

シニア犬の膵炎は、食事管理が症状の改善や再発予防に大きく関わる病気です。

特に高脂肪の食事は膵臓への負担となるため、低脂肪で消化に優しい食事を意識することが重要です。

また、一度に多く与えず、少量を複数回に分けるなど、与え方の工夫も欠かせません。

療法食を基本としながら、必要に応じて手作り食やトッピングを取り入れることで、食欲が落ちたシニア犬でも食事管理しやすくなります。

自己判断は避け、愛犬の状態に合わせて獣医師と相談しながら継続的にケアしていきましょう。

また、再発が多い病気であるため、愛犬の体調に異変を感じたときは、早めに動物病院を受診するよう心がけてくださいね。

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この記事を書いた人

浅川 雅清のアバター 浅川 雅清 獣医師

2016年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。
同年よりペットショップ併設の動物病院にて勤務。
犬・猫・うさぎ・ハムスターの診察を中心に、ペットショップの生体管理や採用業務、ペット用品の開発に携わる。
1年間の院長経験を経て、2024年よりフリーランスとして独立。
現在は診療業務の他、オンラインでの医療相談、往診、コラム作成、SNS監修、多数の商品監修などを行っている。

【保有資格】
獣医師国家資格 / JADP認定動物介護士(R) / 犬の栄養管理士マスター / 日本獣医腎泌尿器学会認定医(2026年4月~)/ Hillsフードアドバイザープログラム修了 / ノビバックワクチンアドバイザープログラム修了

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