愛犬とのお別れは、できれば考えたくはないですよね。
私も4匹の高齢の愛犬たちと暮らしていて、最期のことは考えたくありませんでした。それどころか、「このまま時間が止まったらいいのに」といつも思っていたものです。
けれど、どれだけそう願っても、時間の流れに逆らうことはできません。犬は私たち人間よりもずっと速いスピードで一生を駆け抜けていきます。
ついこの前まで子犬だったように感じていても、気づけばシニア期を迎え、愛犬との時間が決して永遠ではないことに気づかされるのではないでしょうか。
それだけではなく、いざというときには、気持ちが追いつかないまま大切なことを決めなければならないこともあります。
そのときに、愛犬にとってよりよい選択ができるように、今のうちから考えておくことが大切です。
この記事では、ペット終活アドバイザーの私が、ペットの終活について解説します。
ペットの終活は「これからの時間をその子らしく穏やかに過ごす」ための準備

ペットの終活に、明確に定められた定義があるわけではありません。
一般的に「終活」は、人生の最期に向けた準備だけではなく、これからの時間を自分らしく過ごすために、今後のことを考えたり備えたりする意味でも使われています。
ペットの場合も、基本的な考え方は同じです。
ただし、犬は言葉を話すことができないため、その時々の状況や状態に応じて、愛犬にとって何がより良い選択なのかを飼い主さんが考えていく必要があるでしょう。
また、獣医療の観点では、QOL(生活の質)をできるだけ保ち、快適さを高めるとともに、苦痛がある場合は最小限に抑えることが大切と考えられています。(※1)
そのため、ペットの終活では最期のことだけを考えるのではなく、愛犬が「今」をどう過ごすかにも目を向けていくことが大切なのです。
ペットの終活で考えておきたい5つのこと

「終活」と聞いても、実際に何からしたらいいのか分からないですよね。
ペットの終活は、考えていかなければいけないことがたくさんあります。
- 治療や介護の方針
- 最期を迎える場所
- 火葬や葬儀の方法
- 遺骨の扱いや供養方法
- 飼い主にもしものことがあったときの備え
ここで、順に見ていきましょう。
治療や介護の方針

愛犬が病気になったときは、どこまで治療を行うのかを考えておくことが大切です。
ただし、「高齢だから」「自然に任せたいから」と治療を行わないことが、必ずしも愛犬にとって負担の少ない選択になるわけではありません。
治療をしないことで、痛みや吐き気、呼吸の苦しさなどが続く場合もあります。
たとえ積極的な治療を行わない場合でも、そうしたつらい症状を和らげるための緩和ケアは必要です。(※2)
自然な経過を見守ることと、痛みや苦しさをそのままにして何もしないことは同じではありません。
AAHA/IAAHPCの終末期ケアガイドラインでも、苦痛を和らげるための有効な緩和措置を行わずに死を待つことは、倫理的・人道的ではないとされています。(※3)
また、介護が必要になったときのことも考えておきましょう。犬も高齢になると、食事や排泄、歩行などに介助が必要になることもあります。
介護が始まってから「こんなに大変だとは思わなかった」とならないよう、どのような介護が必要になる可能性があるのか、どんなサービスを利用できるのかを今のうちから知っておくことが大切です。
残念ながら、病気や介護を理由に、愛犬を手放す選択をする飼い主さんも珍しくありません。
大切な愛犬が最期まで安心して過ごせるように支えることは、飼い主にできる恩返しのひとつではないでしょうか。
最期を迎える場所

自宅なのか動物病院なのか、あるいは愛犬が好きだった場所なのか、最期を迎える場所についても考えておきましょう。
もちろん、実際には愛犬の状態によって、思っていたようにいかないことも少なくありません。
私自身、自宅で看取りたいと思っていましたが、愛犬が緊急入院となり、そのまま病院で最期を迎えた経験があります。
その経験から、ほかの愛犬については「自宅で看取りたい」とあらかじめ獣医師に伝え、実際に入院中に状態が厳しくなったときに自宅へ連れて帰ることができました。その後は持ち直して、元気になってくれましたけどね。
このように、最期がいつどのような形で訪れるかは誰にもわかりません。それでも、希望する場所があるなら、獣医師や家族と共有しておくことは大切です。
火葬や葬儀の方法

考えたくはないことですが、愛犬をどのような形で見送るのかは、亡くなってから短い時間の中で決めなければならないことも多いため、火葬や葬儀について事前に知っておくことが大切です。
まず、ペット霊園や寺院、ペット葬儀場など、どこで火葬や葬儀を行うのかを決めておく必要があります。僧侶に読経を依頼するのか、献花ができるのかなど、希望する形でお別れができるか確認しておくことをおすすめします。
近年は、出張火葬専門の「ペット火葬ハピネス」のように、自宅まで訪問してもらえるサービスもあり、移動手段が限られている場合や、大型犬の搬送が難しい場合にも利用しやすいでしょう。
また、どこで見送るかに加えて、どのような方法で火葬するかも考えなければいけません。
ペットの火葬には、ほかのペットと一緒に火葬する合同火葬や、一頭ずつ火葬する個別火葬があります。
知人は「愛犬がひとりで寂しくないように」とお寺での合同火葬を選びましたが、時間が経ってから個別火葬にすればよかったと悔やんでいました。
火葬はやり直すことができないからこそ、それぞれの違いを知り、自分がどのように愛犬を見送りたいのかを考えてみましょう。
遺骨の扱いや供養方法

火葬後の遺骨をどのようにするのかについても、知っておきたいところです。
合同火葬では、ほかのペットと一緒に火葬されたあとに埋葬が行われるため、遺骨は返骨されません。
一方、個別火葬では遺骨が返骨されるのが一般的です。自宅に骨壺を置いて手元供養する、ペット霊園や納骨堂へ納骨する、墓地へ埋葬する、遺骨の一部を分骨して手元に残すなど、さまざまな供養方法があります。
また、業者によっては、個別火葬の後にそのままペット霊園や寺院などへ納骨・供養してもらう方法も選べますよ。
どのように供養したいかによって火葬方法も変わるため、納得できる見送り方を選びましょう。
飼い主にもしものことがあったときの備え

ペットの終活では、飼い主さん自身が愛犬のお世話をできなくなる可能性についても考えておく必要があります。
突然の事故や病気などで、自分が愛犬より先に亡くなったとき、誰がお世話をしてくれるのでしょうか?
家族や親しい人がいるからといって、必ず引き取ってもらえるとは限りません。
あらかじめ候補となる人に意思を確認し、愛犬の性格や持病、食事、かかりつけの動物病院など、必要な情報を残しておくことも大切です。
そうはいっても、身近に愛犬を託せる人がいない場合もありますね。その場合は、老犬ホームや終生飼養を受け付けている保護施設・団体などを調べておくといいでしょう。
さらに、引き取り先が決まっていても、その後の飼育費をどうするかという問題があります。ペット信託など、愛犬のためにお金を残す方法について知っておくことも終活の一つです。
4匹を看取って感じたペットの終活で大切なこと

私はこれまで4匹の愛犬を看取ってきましたが、お別れまでの経過は一匹一匹まったく違いました。
どれだけ事前に考えていても、実際には思っていた通りにいかないことがほとんどです。
でも、何も知らないままそのときを迎えるのと、どのような選択肢があるのかを知ったうえで迎えるのでは、ぜんぜん違います。
そして、今は亡き4匹の愛犬たちと過ごした時間の中で感じたのは、先のことばかりに目を向けてはいけないということでした。愛犬と過ごせる「今」は今しかないのですから。
いつか訪れるお別れについて備えることも必要ですが、それ以上に、今、目の前にいる愛犬との1分1秒を大切にしてください。
まとめ|終活は愛犬との「今」を大切にするためのもの

ペットの終活に正解はありません。
愛犬の年齢や体調が変われば、必要になる備えや選択も変わっていきます。終活は一度考えて終わりではなく、そのときどきで見直していくものです。
それでも、決して変えてはいけないのは、愛犬を第一に考えることです。
QOL(生活の質)をできるだけ保ち、その子らしく穏やかに過ごせるように、今の愛犬にとって何が一番よいのかを考え続けていきましょう。


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