愛犬がシニア期に入り、健康診断などで「肝臓の数値が高い」と言われると、心配になりますよね。
そんなとき、
「なぜ肝臓の数値が高いのだろう?」
「注意すべき食材って?」
「いいサプリメントはあるの?」
といった疑問を持つこともあるでしょう。
老犬では、血液検査で肝臓の数値が上昇する原因にはさまざまなものがありますが、「数値が高い=肝機能が低下している」とは限りません。
また、必要な食事管理も病気によって異なるうえ、肝臓だけでなく筋肉量や体重、併発する病気なども含めて食事を考えることが大切です。
この記事では、老犬の肝臓の数値が高いときによくある原因や症状、食事の工夫、避けたい食べ物、サプリメントについて、獣医師が分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、愛犬の肝臓の数値が高いときの食事について、正しい理解を深めましょう。
老犬で肝臓の数値が高いとどうなる?主な原因と症状

肝臓の数値が高い場合、肝臓が負担を受けていたり、食べ物や飲み薬の影響を受けていたりすることが考えられます。
病気の種類や進行度によっては目立った症状が現れないこともありますが、食欲不振や嘔吐、体重減少、黄疸などの症状が見られる場合もあり、犬によってさまざまです。
一方で、肝臓がどのように負担を受けているのか、機能がどの程度低下しているのかは、血液検査の数値のみでは判断することはできません。
そのため、必要に応じてレントゲン検査や超音波(エコー)検査などを行い、原因を調べることが大切です。
一般的に老犬の血液検査では、肝臓の状態を調べるために以下の項目が測定されます。
- AST(GOT)
…肝臓や筋肉などに含まれる酵素です。肝細胞の障害などで上昇しますが、筋肉の損傷によって高くなることもあります。 - ALT(GPT)
…主に肝細胞に含まれる酵素で、肝細胞が傷つくと血液中の数値が上昇します。 - ALP
…肝臓への負担のほか、胆汁の流れが悪くなったときなどにも上昇する数値です。老犬では、ステロイドなどの薬やホルモンの影響でも高くなることがあります。 - GGT
…肝臓への負担のほか、胆管への負担や胆汁の流れが悪くなったときなどにも上昇する数値です。
また、ALTを例にすると、基準値上限の数値をもとにどれくらい上昇しているかによって、以下の表のように判断します。
| 上昇の程度(目安) | 軽度 | 中等度 | 重度 |
|---|---|---|---|
| ALT | 上限の1~2倍 | 上限の2~5倍 | 上限の5~10倍 |
では、老犬で肝臓の数値が高いときのよくある原因や症状について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
①老犬で肝臓の数値が上がる主な原因

老犬の肝臓の数値が上がる原因で、よく見られる病気を以下にまとめました。
- 門脈低形成
- 門脈シャント
- 肝臓腫瘍(肝細胞癌など)
- 慢性肝炎
- 胆嚢粘液嚢腫
- 副腎皮質機能亢進症
- 空胞性肝障害
- 誤食による中毒
- 薬の副作用(ステロイド剤など)
- 銅関連性肝炎
特に老犬では、若い犬に比べて腫瘍や慢性肝炎、副腎皮質機能亢進症のような病気が見つかりやすい傾向があります。
そのため、「年齢のせいだから仕方ない」と考えるのではなく、血液検査以外の検査を組み合わせて、総合的に原因を調べることが大切です。
②老犬で肝臓の数値が高いときに見られる症状

老犬の肝臓の病気では、初期には目立った症状が出ないことも珍しくありません。
しかし、進行すると、以下のような変化が見られる場合があります。
- 食欲が低下する
- 元気がなくなる
- 体重が減る
- 嘔吐や下痢をする
- 水を飲む量や尿量が増える
- 黄疸が見られる
- ふらつく
- けいれんを起こす
特に老犬では、「寝ている時間が増えた」「食欲が少し落ちた」「痩せてきた」といった変化は、単なる加齢によるものと思われがちですが、実は病気のサインであることも珍しくないため、注意しましょう。
【ただし!】肝臓の数値が高くても、自己判断で食事制限しない

老犬の肝臓の数値が高いと「食事が悪かったのでは」と考えがちですが、自己判断で食事制限を行うことは避けましょう。
その理由は、肝臓の数値が高いすべての老犬で、肝機能が低下しているとは限らないからです。
肝臓の数値は、薬の影響やおやつで与えた食べ物など、病気以外の原因で上昇することもあるため、一度数値が高かったからといって、必ずしも病気とは限りません。
むしろ、必要以上に食事制限をすると、栄養バランスが崩れ筋肉量を維持できなくなるなど、逆に老犬の生活の質を下げる可能性があります。
つまり、「肝臓の数値が高いから食事を制限する」のではなく、「どのような病気で数値が高いのか」を確認して、獣医師と相談しながら食事を決めることが大切です。
老犬で肝臓の数値が高いときの食事の工夫

肝臓の数値が高くても肝機能の低下が軽度の場合は、タンパク質を含めた栄養素をバランスよく含み、消化・吸収されやすい食事を選びましょう。
一方で、肝機能が重度に低下している場合、タンパク質を制限した食事を検討する必要があります。
ここでは、それぞれの食事の工夫について、詳しく見ていきましょう。
①肝臓の機能維持のための食事管理

肝臓の数値が高くても肝機能の低下が軽度の場合は、消化しやすく栄養バランスの整った、愛犬が無理なく食べ続けられる総合栄養食にしましょう。
特に老犬で意識したいのが、以下のポイントです。
- 必要なカロリーを確保する
- 良質なタンパク質を摂取する
- 体重だけでなく筋肉量もチェックする
- 過剰な脂質を摂取しない
- 十分な水分を確保する
- 食欲が落ちている場合は嗜好性も重視する
老犬では、加齢とともに筋肉量が低下しやすい傾向があります。
そのため、肝臓の数値が高いからといって無理にタンパク質を制限すると、さらなる筋肉量の低下を引き起こす可能性が否定できません。
なお、肝臓用の療法食は、肝臓の数値が高いすべての老犬に必要というわけではないため、自己判断で切り替えずに獣医師の指導のもとで与えることが大切です。
②肝臓の機能低下が重度の場合の食事管理

(画像:肝臓サポート ドライ – 犬用食事療法食 – Royal Canin)
老犬の肝機能が重度に低下した場合は、病状に合わせた慎重な食事管理が必要です。
例えば肝臓には、タンパク質の分解・代謝によって生じるアンモニアなどの有害な物質を処理する働きがありますが、肝機能が大きく低下するとその処理が十分にいきません。
そうすると、肝性脳症※を引き起こしてしまうことがあるため、食事中のタンパク質の量や質を調整した食事が必要です。(※肝性脳症:肝機能が大きく低下したときなどに、体内で処理しきれなくなったアンモニアなどの物質が脳に影響を与え、神経症状を起こす状態。)
また、肝臓に銅が過剰に蓄積して病気を引き起こしてしまうケースもあるため、そういった場合には、銅の量を調整した食事が勧められることがあります。
肝臓用の療法食は、タンパク質の量や質、銅などの成分が調整されているので、獣医師の指導のもと与えることで、アンモニアなどの有害な物質の影響を抑えたり、銅のさらなる蓄積を防ぐことが期待できるでしょう。
ただし、肝機能が低下している老犬すべてにタンパク質の制限が必要なわけではなく、必要以上に制限すると筋肉量の低下につながるおそれもあります。
また、食欲が低下しがちな老犬では、療法食を食べてくれないことも珍しくありません。
十分なカロリーを摂取できない状態が続くと体力の低下につながるため、療法食だけにこだわりすぎず、獣医師と相談しながら食事内容を調整することが大切です。
肝臓の数値が高い老犬に食べさせてはいけないもの

老犬で肝臓の数値が高いからといって、特定の食材を一律で禁止する必要があるわけではありません。
一方で、日常的な食事では以下のような食べ物に注意が必要です。
- 脂肪分を多く含む食材
- 銅を多く含む食材
- 人間の食べ物
ここでは、老犬の肝臓の数値が高いときに、特に注意したい食べ物について詳しく見ていきましょう。
①脂肪分が高い食材

脂肪分を多く含む食材は、高脂血症や膵炎のリスクを高め、肝臓への負担につながる可能性があります。
また、胆泥症や胆石症などが見られる場合も、脂質を控えた食事がすすめられることも珍しくありません。
特に注意したいのは、以下のような食べ物です。
- 脂身の多い肉
- 豚バラ肉など脂身の多い部位
- ベーコンやソーセージなどの加工肉
- 唐揚げや天ぷらなどの揚げ物
- 生クリームやバター
- チーズなど脂肪分の多い乳製品
- 脂肪分の多いジャーキーやおやつ
一方で、脂肪は犬にとって大切なエネルギー源であり、脂溶性ビタミンの吸収などにも関わる栄養素です。
そのため、肝臓の数値が高いからといって、脂肪を一律に制限する必要がない場合もあることから、獣医師と相談したうえで適切な食事を選びましょう。
②銅を多く含む食材

銅は犬にとって必要なミネラルですが、銅関連性慢性肝炎などの銅が関連する病気が疑われる場合には、食事中の銅を制限することがあります。
代表的な食材として、以下のようなものに注意しましょう。
- レバーなどの内臓肉
- 貝類
ただし、肝臓の数値が高いすべての老犬で銅の制限が必要になるわけではないことに注意しましょう。
③人間の食べ物

肝臓の数値が高い老犬には、人間用に味付けされた食べ物は与えないようにしましょう。
人間用の料理は、犬にとって塩分や脂肪、カロリーが過剰になりやすいうえ、犬には有害な食材や調味料が含まれていることがあります。
特に、以下のような人間用の食べ物は与えないようにしてください。
- 玉ねぎ・にんにくなどのネギ類
- チョコレート・ココア
- キシリトールを含む食品
- ぶどう・レーズン
- アルコール
- カフェインを含む飲み物
- 味付けの濃い料理
- 揚げ物や脂っこい料理
上記の中でも、キシリトールは、老犬が中毒量を摂取すると肝障害を起こす可能性があるため注意が必要です。
また、ネギ類やぶどう、チョコレートなども中毒を起こせば命にかかわることもあるため、絶対に与えないようにしてください。
もし誤って食べてしまった場合は、食べたものやその量、食べた時間などを確認し、早急に動物病院に相談しましょう。
肝臓の数値が高い老犬におすすめのサプリ

老犬で肝臓の数値が高い場合、肝臓の健康維持をサポートする目的で、治療や食事と並行してサプリメントを使用することがあります。
ここでは、犬の肝臓ケアで使用されることがある代表的な成分とその働きを紹介しますので、サプリメントに含まれているかチェックしてみましょう。
①SAMe(S-アデノシルメチオニン)

SAMeは、犬の体内にもともと存在する成分の一つで、肝臓での代謝をサポートする働きが期待されています。
そのほかに、肝臓で重要な抗酸化物質であるグルタチオンの維持にも関係しており、酸化ストレスから肝細胞を守る働きにも注目されています。
ただし、SAMeは薬のように病気の原因を直接治療するものではないため、必要に応じて治療を補助する目的で使用すると考えるとよいでしょう。
②シリマリン(マリアアザミ)

シリマリンは、マリアアザミ(ミルクシスル)という植物に含まれる成分です。
抗酸化作用などが期待され、老犬の肝臓の健康をサポートする目的でサプリメントに利用されています。
シリマリンは、人を対象とした基礎研究や一部の臨床研究で、毒物や薬剤による肝障害を軽減する可能性が示されている成分ですが、すべての犬の肝臓病に対して効果が確立しているわけではないことに注意しましょう。
③ビタミンE

ビタミンEは、細胞を酸化ストレスから守る働きを持つ抗酸化ビタミンです。
特に、慢性的な肝臓の炎症や酸化ストレスが関係する病気では、抗酸化作用を持つビタミンEを含むサプリメントが使用されることがあります。
ただし、ビタミンEは「多く与えるほど肝臓に良い」というものではありません。
食事から必要量を摂取できている老犬に、自己判断でサプリメントを追加すると、栄養バランスを崩す可能性があるため、獣医師と相談のうえ使用するようにしましょう。
④BCAA(分岐鎖アミノ酸)

BCAAとは、バリン・ロイシン・イソロイシンの3種類の必須アミノ酸を指します。
肝機能が大きく低下した老犬では体内のアミノ酸バランスが乱れることがあるため、意識的に摂取したい栄養素の一つです。
また、筋肉中のタンパク質分解を抑えたり、筋肉の合成にも関わったりすることから、筋肉量が低下しがちな老犬にとって、健康維持に役立つことが期待されています。
老犬の肝臓の数値が高い!獣医師によるQ&A

ここでは、老犬で肝臓の数値が高いときによくある質問をまとめました。
まとめ|老犬の肝臓の数値が高いときは、原因に合わせた食事管理が大切

老犬の肝臓の数値が高い場合、必ずしも肝機能が低下しているとは限りません。
老犬では、肝臓の数値が高い原因として、肝臓の病気だけでなく、胆嚢の病気や内分泌疾患、薬の影響など、さまざまな原因が考えられます。
そのため、自己判断でタンパク質や脂質を極端に制限するのではなく、愛犬の病気や栄養状態に合わせて調整することが大切です。
血液検査で肝臓の数値が高いと言われたら、数値だけで判断せず原因を確認したうえで、獣医師と相談しながら食生活を見直していきましょう。


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