【獣医師執筆】老犬が水をよく飲むのは病気?原因と多飲の判断、受診の目安

愛犬が年齢を重ね、若い頃と比べて水をよく飲む様子を見ると、心配になりますよね。

そんなとき、

「何かの病気にかかったのだろうか?」
「適切な飲水量はどれくらいなのだろう?」
「動物病院を受診したほうがいいのかな?」

といった疑問をお持ちではないでしょうか?

実は、私自身の臨床経験でも、老犬が水をよく飲むようになったという相談をよく受けます。

その原因は加齢や季節による変化である場合もありますが、ときに病気のサインであることをご存じでしょうか?

本記事では、老犬が水をよく飲む原因や「多飲」の判断基準、よくある間違い、受診の目安について、獣医師がわかりやすく解説します。

最後までお読みいただき、老犬が水をよく飲む際の対処方法を理解しましょう。

浅川雅清
獣医師

獣医師国家資格 / 動物介護士 / 犬の管理栄養士マスター / 日本獣医腎泌尿器学会認定医(2026年4月~) / Hillsフードアドバイザープログラム修了 / ノビバックワクチンアドバイザープログラム修了

浅川 雅清

獣医師歴10年。2016年4月から東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務。分院にて院長として勤務した後、フリーランスとして独立。現在は診療業務の他、往診や記事作成、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行う。

目次

老犬が水をよく飲む主な原因は環境・病気・ストレス

まず、老犬が水をよく飲む原因として、どのようなものが多いのでしょうか?

その原因は大きく分けて4つあります。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①環境

気温や湿度が高い季節では、体温を調節するために、犬は水をよく飲むようになります。

また、冬でも暖房の使用によって室内が乾燥している場合は、水をよく飲むことも少なくありません。

さらに、食事をドライフード中心の食事に変えた場合も、食事からの水分摂取量が減るため、その分を補う形で飲水量が増えることがあります。

②病気

老犬が水をよく飲む原因として最も注意すべきなのが病気です。

特に老犬になると、内臓の病気やホルモンの病気が多くなり、その初期症状として水をよく飲むことが少なくありません。

飲水量の増加とともに、

  • おしっこの量が増えた
  • 体重が増えた、減った
  • 嘔吐や下痢をする

などの症状が見られる場合は、病気の可能性を疑う必要があります。

③ストレス

老犬では、環境の変化によってストレスを感じると、水をよく飲むことがあります。

ストレスの原因としてよくあるものは、

  • 引っ越しをした
  • 家族構成に変化があった
  • 新しいペットがきた
  • ペットホテルに預けられた

といったものが挙げられます。

ストレスで水を飲むのは、緊張を紛らわせるための行動や、ストレスを感じた際に分泌されるホルモンの影響であることが多いです。

④薬の副作用

老犬では、治療に使われる薬の一部に、水をよく飲むようになる副作用を持つものがあります。

具体的には、ステロイド薬利尿剤などが挙げられます。

薬を飲ませ始めた後に水をよく飲むようになった場合は、薬の副作用の可能性もあるため、処方を受けた動物病院に相談しましょう。

ただし、薬は治療のために必要だから処方されるものです。

副作用が心配だからといって、自己判断で投薬を中止することは避けてください。

老犬が水をよく飲むとき「多飲」と判断する目安

一般的に多飲と判断される飲水量は、体重1kgあたり約100mLを超える量と言われています。

では、老犬の通常の飲水量は、どれくらいなのでしょうか?

飲水量の確認方法についても、それぞれ詳しく見ていきましょう。

老犬の通常の飲水量(1日の目安)

老犬の1日の適切な飲水量は、体重1kgあたり約50mL前後と言われています。

例えば体重5kgの老犬であれば、約250mlが適正な飲水量ということです。

しかし、実際の飲水量はさまざまな要因で増減します。

例えば、ウエットフードを使用している場合は、そこに含まれる水分量がドライフードと比べて豊富なため、水を飲む量が少なくなります。

ドライフードの水分量は約10%以下なのに対し、ウエットフードの水分量は約75~80%と、約8倍の水分を含みます。

そのため、同じ体重の犬であっても、飲水量に差があることも少なくありません。

また、ウエットフードを多く使用している場合は、体重あたり約100mLを超えなくても多飲と判断される場合もありますので、注意が必要です。

飲水量の確認方法

では、老犬が水をよく飲む際に飲水量を把握するには、どのような方法で測定すればよいのでしょうか?

具体的には、

  • 朝に計量した水をお皿に用意し、翌日同じ時間に残量を測る
  • ペットボトルに計量した水を用意し、一日で減った量を測る
  • 給水ボトルの目盛を使用し、一日で減った量を測る

といった方法がよく行われます。

また、多頭飼いの場合は1頭1頭の管理が難しくなるため、一時的に部屋を分けるなどで管理するとより正確に測定できるでしょう。

【注意!】老犬が水をよく飲むときに飼い主がやりがちな危ない間違い5つ

老犬が水をよく飲むときに、飼い主様がやりがちな間違いがあります。

これらは日頃の診察でもよく見かけることで、場合によっては愛犬の体調をより悪化させてしまう可能性があり、注意が必要です。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

また、正しいサポート方法は「老犬が水をよく飲む時の対処法」をご覧ください。

①水を制限する

愛犬が水をよく飲むときに、「飲みすぎだから」と飲水を制限するのはとても危険です。

体が必要としている水分を制限してしまうと、脱水が起こり、病状の悪化や体調の急変を引き起こす可能性があります。

②よく飲むのは「元気な証拠」

飼い主様からよく伺うのは、「うちの子はよく食べて水をよく飲むから、元気です」といったお話です。

しかし、水をよく飲むことが必ずしも健康とは限らず、むしろ病気のサインであることも少なくありません。

そのため、様子見で大丈夫と自己判断するのはとても危険です。

③ネット情報だけで自己判断する

近年はAIやインターネットが普及し、愛犬の症状を検索して自己判断で受診を見合わせる方が多くなっています。

正しい判断をされている飼い主様もいらっしゃいますが、なかには誤った情報を参照している飼い主様が少なくありません。

AIやネットの情報だけで自己判断せず、動物病院を受診するよう心がけましょう。

④飲水量や体調を把握しない

飲水量はさまざまな要因で変化します。

そのため、「なんとなく水をよく飲む気がする」という情報だけでは、獣医師は正確な判断ができません。

また、水をよく飲む以外にも病気のサインがないか、愛犬をよく観察してあげることで、病気の早期発見につながります。

⑤「暑さのせい」と様子を見る

「夏だから、きっと暑くて水をよく飲むのだろう」と自己判断し、様子を見る飼い主様が少なくありません。

確かに環境要因も原因の一つではありますが、実は季節とは関係がなく、病気が原因の場合もあるため注意が必要です。

老犬が水をよく飲むときに疑われる病気

では、老犬が水をよく飲むときに疑われる病気としては、どのようなものが挙げられるのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①慢性腎臓病

慢性腎臓病は、加齢とともに腎機能が低下し、体内の老廃物を尿で排出できなくなる病気です。

薄い尿がたくさん作られるため、結果として水をよく飲むようになります。

②クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)

クッシング症候群は、副腎と呼ばれる、ステロイドホルモンを作る臓器の働きが過剰になり起こる病気です。

ステロイドホルモンの作用によって、水をよく飲む症状が引き起こされます。

③糖尿病

糖尿病は、血糖値を調節する「インスリン」というホルモンの作用が弱まり、血糖値が上昇する病気です。

尿中に糖が排出されることで尿量が増え、結果として水をよく飲むようになります。

④子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は、主に避妊手術をしていない老犬で多く、子宮に細菌が侵入し膿が溜まる病気です。

放置すると、子宮が破裂し命に関わることがあるため、注意が必要です。

老犬が水をよく飲むときに動物病院を受診する目安

では、老犬が水をよく飲む場合、どのようなタイミングで動物病院を受診するべきなのでしょうか?

まず、実際に愛犬がどれくらい水を飲んでいるかを計測し、体重あたり100mLの飲水量を超えている場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

超えていない場合でも、

  • おしっこの回数・量が増えた
  • 元気がない
  • 食欲がない
  • 体重が増えた、減った
  • 嘔吐や下痢をしている
  • 毛が抜ける
  • 陰部から分泌物が出る

といった症状が見られる場合は、病気が隠れていることも少なくありません。

これらの症状も、動物病院を受診するべき目安の一つとなります。

動物病院を受診する際の注意点

では、実際に動物病院を受診する際には、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

動物病院に行くときに準備したいもの

まず、動物病院を受診する際は、

  • 飲水量の記録
  • 食事内容
  • 服用中の薬
  • 今までの検査結果
  • 飲水量以外の症状
  • 最後に発情が来た日

といった情報を細かくまとめましょう。

そうすることで、獣医師が診断をスムーズに進めることができます。

獣医師からのお願い

老犬が水をよく飲むときに正確な診断を行うためには、前述のような具体的な情報が必要となります。

そのため、日頃から愛犬の様子をよく観察するようにしましょう。

また、些細な体調の変化も手がかりの一つですので、気になることはすべてお話いただくとよいでしょう。

一方、病気の診断にはさまざまな検査が必要になります。

具体的には、

  • 血液検査
  • 超音波検査
  • レントゲン検査
  • 尿検査

などの検査を行いますので、費用面にもご理解いただけると幸いです。

老犬が水をよく飲む時の対処法

最後に、老犬が水をよく飲むときは、どのように対処すればよいのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①体調を確認する

まずは愛犬の全体的な健康状態をチェックしましょう。

前述のような、水をよく飲む以外の症状がないか、細かく確認することが大切です。

②動物病院を受診する

毎日愛犬と接している飼い主様でも、意外と体調の変化に気づけないことも少なくありません。

相談だけでも構いませんので、体調に少しでも気になる点があれば、早めに動物病院を受診しましょう。

③水分補給をサポートする

体調に問題がない場合は、体に必要な水分をしっかり飲めるよう、サポートしてあげましょう。

具体的には、

  • 常に新鮮な水を用意する
  • 複数箇所に水皿を置く
  • ウエットフードを取り入れる
  • 犬用ミルクや肉のゆで汁などを活用する

といった方法が挙げられます。

まとめ|老犬が水をよく飲むときは早めの受診を

老犬が水をよく飲む背景には、ストレスや季節といった環境要因だけでなく、病気が隠れていることも少なくありません。

特に、水をよく飲む以外の症状がある場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

また、日頃から愛犬の飲水量を正確に測定することで、病気の早期発見・早期治療へとつながります。

日々の観察と正確な記録が、愛犬の健康を守る第一歩です。

本記事を参考に、ぜひ今日から愛犬の飲水量を測定してみましょう。

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この記事を書いた人

浅川 雅清のアバター 浅川 雅清 獣医師

2016年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。
同年よりペットショップ併設の動物病院にて勤務。
犬・猫・うさぎ・ハムスターの診察を中心に、ペットショップの生体管理や採用業務、ペット用品の開発に携わる。
1年間の院長経験を経て、2024年よりフリーランスとして独立。
現在は診療業務の他、オンラインでの医療相談、往診、コラム作成、SNS監修、多数の商品監修などを行っている。

【保有資格】
【資格】
獣医師国家資格 / JADP認定動物介護士(R) / 犬の栄養管理士マスター / 日本獣医腎泌尿器学会認定医(2026年4月~)/ Hillsフードアドバイザープログラム修了 / ノビバックワクチンアドバイザープログラム修了

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