愛犬が年齢を重ね、咳をしたりむせる様子が見られて動物病院を受診すると、獣医師から「気管虚脱」と診断されることが珍しくありません。
診断を受けたあと、愛犬の食事やケアをどうするべきかとても悩みますよね。
そんなとき、
「気管虚脱の老犬に与える食事で注意すべき点とは?」
「食事以外にはどんなケアをしたらいいの?」
「どんな症状が出たら受診すべき?」
といった疑問がわくのではないでしょうか。
実は、気管虚脱と診断された老犬では、食事の与え方や種類、散歩や室内の環境などで、注意すべき点がたくさんあります。
この記事では、気管虚脱の老犬の食事で気をつけたい7つのポイントに加え、食事以外の日常ケア、動物病院へ相談したい症状について、獣医師が分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、老犬の気管虚脱のケアについて、正しい理解を深めましょう。
気管虚脱の老犬にはどんな食事がいい?

結論から申し上げますと、気管虚脱の老犬には、愛犬の健康状態に適した栄養バランスで、適正体重が維持できる食事がおすすめです。
- 良質なタンパク質がとれるフードを選ぶ
- 脂質が高すぎないフードを選ぶ
- 愛犬にあった給餌量を与える
- 与え方(トッピングの量など)が適切か見直す
- おやつの量が適切か見直す
ただし、一般的に気管虚脱の治療は食事が中心となるわけではありません。
そもそも気管虚脱とは、気管を支えている軟骨などが加齢とともに弱くなり、気管がつぶれやすくなる病気であり、食事が直接の原因ではないからです。
ただ、興奮したときや運動時、暑い環境、肥満などで症状が強くなる場合が珍しくありません。
そのため、気管虚脱の老犬では、適正体重が維持できるよう食事管理をしてあげることが大切です。
※老犬では気管虚脱以外の病気を併発することもあります。「太らせない」ことだけを考えすぎず、痩せすぎや筋肉量の低下にも注意しながら、愛犬に適した栄養状態を維持することが重要です。
気管虚脱の老犬の食事で気をつけたい7つのポイント

では、気管虚脱の老犬の食事では、具体的にどのような点に注意すればよいのでしょうか?
- 適正体重を維持する
- 一度にたくさん食べさせない
- 早食いや興奮を避ける
- 食べやすい硬さ・大きさに調整する
- 無理のない姿勢で食べられるように食器台を活用する
- 食事中や食後の咳・むせを確認する
- 老犬は痩せすぎや筋肉量の低下にも注意する
ここでは、それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
①適正体重を維持する

体重が増えると呼吸に負担がかかりやすくなる傾向があるため、気管虚脱の老犬では「太りすぎない」ことが重要です。
特に老犬では、加齢による基礎代謝や運動量の低下から、体重が増えやすくなることも少なくありません。
そのため、太り気味の場合は、食事量や食事内容、おやつなどの見直しが必要になることがあります。
- 脂身の多い肉
- ジャーキーなどのおやつ
- ベーコンやソーセージなどの加工肉
- チーズやバターなどの乳製品
- ケーキやクッキーなどの人用のお菓子
これらの食材は、多く摂り過ぎると体重増加につながる可能性があるため、注意が必要です。
②一度にたくさん食べさせない

気管虚脱の老犬では、一度に大量の食事を与えるのではなく、無理なく食べられる量と回数の食事を与えることが大切です。
一度に大量の食事を与えることで、食後に苦しそうにする、咳が増える、嘔吐するといった様子がある場合は、食事量や回数を見直すことがあります。
特に老犬では、一度の食事で十分な量を食べられない場合もあるため、愛犬が無理なく食べられる量と回数に調節してあげるようにしましょう。

③早食いや興奮を避ける

気管虚脱の老犬では、食事中の興奮や早食いによって、咳が出たり一時的に悪化したりすることがあります。
特に、他の犬と競うように食べたり、食事前に吠え続けたりすると興奮しやすくなるので、できるだけ興奮を抑えて、落ち着いて食べられる環境を整えてあげましょう。
具体的には、次のような工夫があります。
- 他の犬と離れた場所で食べさせる
- 食事の準備で興奮する場合は、落ち着いてから食事を与える
- 静かで落ち着いた場所で食べさせる
- 早食い対策用の食器などで早食いを防止する
このように、食事そのものだけでなく、食事前から食事中まで、できるだけ興奮しにくい環境を作ることがポイントです。
④食べやすい硬さ・大きさに調整する

気管虚脱の老犬では、フードを食べにくそうにしたり、食事中にむせたりすることがあるので、愛犬が食べやすいよう工夫してあげましょう。
粒が大きすぎる場合は小粒のフードを検討したり、フードが硬くて食べにくそうにしている場合は、ぬるま湯でふやかして与えるなど、愛犬に合わせて調整してあげてください。
成犬の頃と比べ、歯や口腔内の状態、噛む力、飲み込む力などが変化してくるので、食べるものだけではなく与え方にも配慮が必要です。
⑤無理のない姿勢で食べられるように食器台を活用する

気管虚脱の老犬では、食べづらさからむせてしまったり、咳が出てしまうことも少なくありません。
そのような場合には、食器台を使って食べやすい高さに調整してあげましょう。
老犬は筋肉量の低下や関節のトラブルから、床に食器を置いた状態で食べる姿勢が維持しづらいものです。
まずは、愛犬が自然な姿勢で食事ができているか観察してみましょう。
⑥食事中や食後の咳・むせを確認する

気管虚脱の老犬では、「何を食べたか」だけでなく、「食べた後にどうなったか」を観察することが大切です。
特に、食べ始めや食後、水を飲んだ後などは、咳をしたりむせることのが多いタイミングとなので特に注意して見ておきましょう。
日々、症状の変化がないかを確認することが大切です。
⑦老犬は痩せすぎや筋肉量の低下にも注意する

気管虚脱の老犬では、肥満への対策と同じくらい、痩せすぎや筋肉量の低下を防ぐことも大切です。
老犬はもともと筋肉量が低下しやすく、タンパク質が不足するとさらに筋肉量の低下につながる可能性があります。
そのため、愛犬に必要な栄養やカロリーをしっかり確保し、良質なタンパク質を含む食事を選ぶようにしましょう。
「太ると呼吸に負担がかかる」と聞くと過剰に食事を減らしすぎてしまう飼い主さんもいますが、十分な栄養を確保したうえで適正体重を維持することが大切です。
なお、老犬では気管虚脱と同時に心臓病や腎臓病、消化器疾患などを併発することも少なくありません。
その場合はかかりつけの獣医師と相談の上、他の病気にも配慮した食事管理を行うことが大切です。


食事以外にも行いたい気管虚脱の老犬のケア

気管虚脱の老犬に対して食事以外にもできるケアには、以下のようなものがあります。
- 首輪ではなくハーネスを使用する
- 興奮させすぎずに過ごせる環境を整える
- 室温や湿度に注意する
- 室内でも煙やほこりなど気道への刺激を避ける
ここでは、それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
①首輪ではなくハーネスを使用する

気管虚脱の老犬がお散歩をするときは、首輪ではなくハーネスを使用しましょう。
首輪では、リードを引っ張ったときに頚部へ圧力がかかることがあるため、気管虚脱の老犬にはおすすめできません。
また、「ハーネスなら何でもいい」と考えず、装着したときに呼吸を妨げていないか、歩きにくくなっていないかを確認することが大切です。
②興奮させすぎずに過ごせる環境を整える

気管虚脱の犬では、興奮したり吠えたりすることで咳が増えることがあるため、落ち着いて過ごせる環境を整えることが大切です。
- 来客時に激しく吠える
- インターホンに反応して走り回る
- 散歩中に他の犬を見て興奮する
- 飼い主さんの帰宅時に大喜びする
- フードやおやつを見て興奮する
このような場面があれば、興奮してから落ち着かせるのではなく、できるだけ興奮する前に対処してあげましょう。
例えば、来客やインターホンに反応する場合は、来客前に別室やクレートなどに移動させることで、過剰な興奮を抑えやすくなります。
また、他の犬を見て興奮する場合は、お散歩のときは犬が少ない時間帯や道を選ぶこともおすすめです。
③室温や湿度に注意する

高温多湿の環境では、呼吸への負担が増える可能性があるため、室内の温度は20~25℃、湿度は40~60%程度を一つの目安として、愛犬の様子を見ながら調整しましょう。
特に夏場は、気温が高い時間帯のお散歩を避け、室内でも適切な温度を保つことが負担軽減につながります。
特に老犬では、成犬の頃と比べて環境の変化への対応が難しくなることも珍しくありません。
「冷房を使えば安心」と考えるのではなく、愛犬の様子を見ながら快適な環境を作ることが大切です。
④室内でも煙やほこりなど気道への刺激を避ける

気管虚脱の老犬が過ごす環境では、気管への刺激をできるだけ減らすことも意識しましょう。
- タバコの煙
- ほこり
- 芳香剤・消臭剤
- アロマ・エッセンシャルオイル
- ヘアスプレー・スタイリングスプレー
- 消臭・防水などのスプレー類
これらは、煙や細かな粒子、香りなどが気道を刺激することで、咳を誘発したり、呼吸器への負担になったりする可能性があります。
そのため、室内を清潔に保ち、愛犬が過ごす場所の換気や掃除をこまめに行うことも大切です。
気管虚脱の老犬にこんな症状があるときは早めに受診を

すでに気管虚脱と診断されていて、定期的に動物病院へ通っている老犬でも、以下のような症状の変化が見られる場合は動物病院を受診しましょう。
- 咳の回数が明らかに増えた
- 一回の咳が長く続くようになった
- 夜間や安静時にも咳が増えた
- 少し動いただけで咳き込む
- 散歩に行くとすぐ疲れる
- 呼吸をするときに苦しそう
- 呼吸音が以前より大きくなった
- 食欲や元気がない
- 体重が減ってきた
咳や呼吸のしづらさなどの症状は、気管虚脱のみならず、心臓病や他の呼吸器疾患でも見られることがあります。
そのため、咳や呼吸の様子に変化が見られた場合は、「気管虚脱と診断されているから、咳が出るのは仕方ない」と自己判断せず、獣医師に相談することが大切です。
気管虚脱の老犬の食事に関するよくある質問

ここでは、気管虚脱の老犬によくある質問をまとめました。
まとめ|老犬の気管虚脱は食事だけでなく、体重・食べ方・生活環境を整えることが大切

気管虚脱の老犬には、愛犬の健康状態に合った栄養バランスのよい食事で、適正体重を維持することが大切です。
肥満だけでなく、老犬に起こりやすい痩せすぎや筋肉量の低下にも注意し、持病がある場合は獣医師と相談しながら食事を選びましょう。
また、食事中や食後の症状を確認したり、お散歩のときはハーネスを使ったりするなど、日常生活での工夫も重要です。
興奮や暑さ、煙やほこりなどの刺激をできるだけ避け、愛犬が落ち着いて過ごせる環境を整えてあげましょう。
気管虚脱の老犬では、食事や生活環境を整えながら症状に合わせて適切な治療を続けることが、穏やかな毎日へとつながります。
咳が増えた、呼吸が苦しそう、元気や食欲がないなど、いつもと違う変化が見られた場合は、次回の通院日を待たずに早めに動物病院へ相談するよう心がけましょう。


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