食べているのにどんどん痩せる愛犬を見て、「何とかして太らせたい」と思いますよね。
また、獣医師から「もう少し体重を増やしましょう」と言われてしまった飼い主さんもいるのではないでしょうか。
老犬になると、しっかり食べていても体重が減ってしまうことは珍しくありません。
しかし、老犬が痩せすぎると、筋力の低下や免疫力の低下、肝臓や腎臓への負担、低体温症、持病の悪化など、さまざまなリスクが高まります。
そうはいっても、食べても痩せてしまうのだから、どうしていいか分からなくなってしまいますよね。
実際、私自身も18歳の愛犬が痩せてガリガリになってしまい、体重を増やすためにさまざまなことをしたので、焦りや不安を感じる気持ちがよく分かります。
そこでこの記事では、動物介護士やペットフーディストの私が、老犬が食べているのに痩せる理由や体重を増やす方法を解説します。
愛犬を太らせたい飼い主さんは、ぜひ最後までご覧くださいね。
老犬が食べているのに痩せる理由は?フレイルサイクルに注意!

老犬が食べているのに痩せるのには、以下のようにいくつかの理由があります。
理由によって太らせるための対策や対処法も異なるため、正しく理解しておくことが大切です。
①食事量の不足

老犬が食べているのに痩せるときに、まず最初に考えなければいけないのが食事量が愛犬に適切かどうかです。
ドッグフードのパッケージには体重ごとの1日の給餌量目安が記載されていますが、正直言ってかなり雑で、一般的な目安にしかなりません。
たとえば、体重4~6kgで78~106gと書いてあったら、何グラムが愛犬にとって適正なのか分かりますか?
後にご紹介する「必要な食事量やカロリーを知ろう」で詳しく解説していますが、ライフステージや避妊・去勢の有無、活動量、体型などによって、食事量は大きく異なります。
もし体重6kgなのに、パッケージに書かれている78gしか与えていなければ、明らかに食事量不足でしょう。
②消化吸収率の低下

老犬になると、消化酵素の分泌量が減ったり、腸内の善玉菌の減少、蠕動運動の低下や腸絨毛(ちょうじゅうもう)の萎縮などによって、消化・吸収がうまくできなくなっていきます。
そのため、消化しにくいドッグフードを与えていると、栄養が十分に摂取できずに食べているのに痩せるということが起きてしまうのです。
- 原材料が曖昧なもの
…肉類やミートミールなど具体的な部位が不明瞭なものは、腱や羽毛が混ざっていて消化率が低い傾向にある - 穀物がメインで使用されているもの
…老犬は炭水化物分解酵素(アミラーゼ)の分泌も減るので、穀物が多すぎると消化に負担がかかりやすい - 脂質が多すぎるドライフード
…老犬は脂肪を分解するリパーゼの分泌も減るので、消化不良を起こしやすい - 不明瞭な動物性油脂・植物性油脂や添加物が多いもの
…肝臓や腎臓、膵臓などがフル稼働するため、栄養の吸収に使うべきエネルギーが削られやすい
もちろん、老犬によってはドライフードそのものが消化しにくくなっているということも珍しくありません。
一度いま与えているドッグフードがどんな内容か、原材料を確認してみましょう。
③筋肉量の減少(サルコペニア)

老犬が食べているのに痩せる原因のひとつが、筋肉量の減少(サルコペニア)です。
老犬になると、筋肉を作るためのホルモンや代謝機能が弱まるため、肉や魚などのタンパク質を摂っていても、若い頃のように筋肉をつけることができません。
さらに、活動量が減ることによって、筋肉が少しずつ失われていきます。
筋肉は、体の中でエネルギーを一時的に蓄えておく役割がありますが、筋肉量が減ってしまうと食事から摂ったエネルギーをうまく蓄えておくことができず、体重が増えにくくなるのです。
また、筋肉は熱を作ってくれる場所でもありますが、少ない筋肉でなんとか体温を上げようとして、エネルギーを大量に消耗します。
さらに、食事から摂ったエネルギーが足りなかったり、栄養をうまく吸収できなかったりする状態が続くと、体は筋肉からエネルギーを作り出そうとするため、ますます筋肉が減るという悪循環に陥ってしまうのです。

④エネルギーの使われ方の変化

老犬になると、体を維持するために使われるエネルギーの割合が増えるため、これまでと同じように食べていても痩せてしまうことがあります。
たとえば、消化機能が低下する老犬にとって、食べものを分解して栄養を吸収するという作業自体が大きな負担となり、摂取したエネルギーを消化のために使い果たしてしまうことも珍しくありません。
また、加齢によって自律神経の働きが鈍くなり、気温の変化に合わせた体温調整が難しくなることで、体温を保つことに多くのエネルギーが使われ、体重を増やすことができなくなります。
このように老犬では、食事から摂ったエネルギーが体を維持するために優先的に使われるようになり、食べているのに痩せるということが起きてしまうのです。
⑤病気の影響

老犬が食べているのに痩せる場合は、病気の影響も考えなければいけません。
たとえば、栄養をうまく吸収できなくなる病気や、体の中で多くのエネルギーを消耗する病気があると、しっかり食べていても体重は減っていきます。
- 慢性腸症(炎症性腸疾患など)
…腸の炎症によって、食事から摂った栄養を十分に吸収できなくなることがある - 膵外分泌不全
…消化に必要な消化酵素などの産生が不十分で、食べたものを上手く消化・吸収できなくなる - タンパク喪失性腸症
…吸収したタンパク質が腸から失われてしまう
- 慢性腎臓病
…体の中で常に負担がかかり、生命維持のために多くのエネルギーが使われる - 心臓病
…心臓の働きを保つためにエネルギーが消費される - がん
…腫瘍そのものや体の防御反応によってエネルギー消費が増える
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
…ホルモンの影響で筋肉量が減りやすく、食べていても体重が落ちることがある - 甲状腺機能亢進症
…代謝が過剰に高まり、食べていてもエネルギーが消費されやすくなる
これらの病気は、早期に治療を始めることが重要ですが、進行するまで目立った症状がないことも多いため、注意してください。
⑥フレイルサイクルに陥っている

老犬の場合、原因がいくつも重なって悪循環を起こす「フレイルサイクル」に陥り、体重が減っていくということもあります。
フレイルサイクルは、
- 体重や筋肉量が減ることで動くことがつらくなる
- 活動量が減ってお腹が空かずに食事量が減る
- 食事量が減ることで必要なエネルギーを筋肉から作り出そうとする
- さらに筋肉量が低下する
という負のサイクルです。

このサイクルに入ってしまうと体重を増やすことが難しくなるため、できるだけ早い段階でこの流れを断ち切ってあげることが大切です。
【自動計算】老犬を太らせたいならまず必要な食事量やカロリーを知ろう
老犬を太らせたいときは、まず愛犬が1日に必要なカロリーと食事量の目安を把握することが欠かせません。
以下の自動計算機は、1日5回までの食事回数を考慮した目安を確認できるので、ぜひ活用してください。
ただし、ここで表示された数値は、あくまでも「今の体重」の基準の目安です。
代謝の働きや運動量などには個体差があるほか、持病の有無やどれくらい太らせたいかは異なるため、この基準を目安に少しずつ調整していく必要があります。
必要カロリーの目安と増やし方

すでに痩せている老犬に、今の体重のカロリーだけを与えていては太ってもらうことはできないため、段階的にカロリーを上乗せしていく必要があります。
このとき、1週間に2%ずつ、最大で1ヶ月に10%程度を目安に食事量を増量してください。急激に食事量を増やしてしまうと老犬の体に負担がかかってしまいます。
増量する際は、体調や便の状態に変化がないかを確認しながら行うようにしましょう。
また、理想体重(目標体重)で1日に必要なカロリーや食事量を計算しておくと、より調整しやすくておすすめです。
ただし、老犬の場合は体調や持病、消化吸収力などの影響で個体差が非常に大きく、計算上の目安以上にカロリーが必要になるケースもあります。
実際、私の18歳の愛犬はベスト体重が4.6kgでしたが、重度の大腸炎や持病の影響で、しっかり食べていても3.6kgまで痩せてしまいました。
通常であれば、4.6kgの避妊済老犬なら1日264kcalを目標に考えます。
しかし、愛犬が体重を増やすために必要としたカロリーは500kcal。それでやっと4~4.2kgを維持できていましたよ。
※あくまでも一例であり、すべての老犬に当てはまるわけではありません。


愛犬の体型も要チェック!

老犬に必要なカロリーや食事量は、体重だけで判断しないことも大切です。実際に愛犬を触ったり上から見て、体型(ボディコンディションスコア)を確認しましょう。
老犬では、同じ体重でも筋肉が落ちて脂肪だけが残っている場合や、見た目以上に痩せている場合があります。
また、このときBCS1の老犬では、獣医師の指導のもと増量する必要があるため、早めに動物病院を受診してください。
老犬の体重を増やすためにできる5つのこと

老犬が痩せすぎてしまうと、体力の低下はもちろん、免疫力の低下や自分で自分を直す力(自然治癒力)の低下などが起きるため、病気にかかりやすくなったり病気にかかっても回復するのに時間がかかるなどのリスクが高まります。
持病がある場合は進行を早めてしまうこともあるので、少しでも体重を増やしてあげることが大切です。
ここでは、老犬の体重を増やすためにできる5つの方法について見ていきましょう。
①食事の回数を見直す

老犬になると消化・吸収の働きが衰えるため、しっかり栄養を摂取してもらえるように食事の回数を増やしましょう。
以下に老犬の食事回数の目安をまとめてみたので、愛犬の状態に合わせて増やしてください。
| 状態 | 食事回数 |
|---|---|
| ・元気で食欲もしっかりある ・7~11歳頃 | 3~4回/日 |
| ・食欲が落ち気味 ・ご飯を残し気味 ・ハイシニア(12歳頃~) | 4~5回/日 |
実際に、私が18歳の愛犬に500kcalを食べてもらうためにやったのは、1回80~100gずつ(フレッシュフードやウェットフード)を1日に5回や6回の食事回数で食べてもらっていましたよ。
ウェットフード系は水分量が多くカロリー密度が低いため、たくさん食べてもらう必要がありますが、回数を増やすことで消化・吸収しやすくなり、体重の増加や維持につながりやすいでしょう。
また、カロリー密度度が高いドライフードの場合でも、回数を増やすことはとても大切です。
ドライフードはウェットフード系よりも消化しづらいため、1回量を減らしてその分食事の回数を多くしてあげてくださいね。

②消化しやすい食事を徹底する

老犬の体重を増やすためには、食事の内容にも配慮が必要です。消化しやすい食事を徹底してあげましょう。
消化しやすい食事は、良質なタンパク質や良質な脂質を使用しているのはもちろん、製造方法にも注目することが大切です。
以下に、ドッグフードの消化率をまとめてみました。
| フードタイプ | 消化率の目安(※) |
|---|---|
| フリーズドライフード | 98%以上 |
| フレッシュフード | 95%以上 |
| エアドライフード | 95%前後 |
| ウェットフード | 80~95%※ |
| セミドライフード | 75~90%前後※ |
| ドライフード | 70~93%※ |
※メーカーによって異なる
もちろん、老犬によってフードタイプの好き嫌いはあるので、必ずしもフリーズドライフードやウェットフード系を与えなければいけないということではありません。
その場合、ドライフードでも消化率90%以上のものを選ぶといいでしょう。消化率を公表しているものは少ないですが、消化率が高いドライフードを製造・販売しているメーカーは比較的公表していますよ!
ただし、老犬はドライフードの粒を噛まずに丸呑みしてしまうことが多いので、消化に負担がかかりにくい小粒のものを選んだり、ふやかしてあげることをおすすめします。

③温活する

温活は一見関係ないようにも見えますが、体重を増やすうえでとても重要なサポートになります。腹巻きや機能性ウエア、レッグウォーマーなどを活用して、体を冷やさないようにしてあげましょう。
老犬では体温調節機能が低下しやすく、余分なエネルギーを消耗してしまうことがありますが、体温を安定させることで、こうしたエネルギーの過剰な消費を抑えられる可能性があります。
また、消化管は冷えると動きが鈍くなりますが、お腹周りを温めてあげることで血流が良くなり、消化・吸収の働きをサポートしやすくなります。
さらに、適正な体温を保つことは、体が本来持っている回復力を支えることにも役立ちますよ。
食事量を増やすだけでなく、温活とセットで取り組みましょう。
④適度な運動を取り入れる

老犬の筋肉量を維持・回復させるためにも、適度な運動を取り入れましょう。
筋肉は使わなければ減っていきます。
活動量が極端に少ない状態が続くと、フレイルサイクルに陥ってしまうこともあるため、老犬に無理のない範囲で運動を継続することが大切です。
- 短時間のゆっくりとした散歩
- 室内で弾力性のあるマットや洗濯物の上を歩いてもらう
- 滑らない環境での立ち上がり練習
老犬の運動は、疲れさせることが目的ではありません。運動後にぐったりするようであれば、負荷がかかりすぎているため、もう少し軽い運動に変更しましょう。
また、筋肉を使うことで血流が促進されるため、消化・吸収のサポートにつながることもありますよ。
⑤獣医師と二人三脚で取り組む

老犬の体重を増やすためには、獣医師との連携が欠かせません。
老犬はちょっとしたことで体調を崩したり、大きな病気にかかりやすくなる時期です。定期的に動物病院を受診することは、病気の早期発見や早期治療にも役立ちます。
獣医師は些細なことでも相談に乗ってくれるので、気になることがあれば遠慮せずに聞いてみましょう。
特に現在BCS1の体型の老犬は、必ず獣医師の指導のもと体重の増加を行ってください。
【注意!】老犬を太らせたいからとやってはいけないこと

老犬を太らせたい一心で、かえって体に負担をかけてしまうことは珍しくありません。
ここでは、老犬の体重を増やすうえでやってはいけないことを解説します。
自己判断による食事量の急激な増量

早く太らせたいからといって、自己判断で急に食事量を増やすことはやめましょう。
急激に食事量を増やすと、消化不良による下痢や嘔吐を引き起こすだけでなく、膵臓に大きな負担をかけるため、膵炎などのリスクが高まります。
1週間に2%程度、1ヶ月で最大10%程度までの増量にとどめましょう。
ただし、獣医師から食事量の指示がある場合は、獣医師の指示に従うことが大切です。
犬が食べてはいけないものを食べさせる

とにかく食べさせようと、犬が食べてはいけないものを与えないようにしましょう。
- ネギ類(長ねぎ、玉ねぎ、ニラ、わけぎ、あさつき、エシャロット、ラッキョウ、リーキ など)
- ぶどう、レーズン
- プルーン
- チョコレート、カフェイン
- キシリトール
これらは、中毒症状を引き起こし、命にかかわることもあります。
老犬では蒸しパンやプリンなどを与えることもあると思いますが、上記の犬が食べてはいけないものが含まれていないか確認することが大切です。
老犬に無理をさせる

愛犬の状態を無視して、無理をさせないようにしてください。
たとえば、もともとあまり量が食べられない老犬にたくさんの食事を与えても、食べられないうえに消化に負担がかかるだけです。
その場合は、子犬用フードや回復期用の療法食を取り入れるなど、少量でもしっかり栄養が摂れるように工夫してあげるといいでしょう。
また、筋肉をつけたいからといって散歩時間を長めに取ったり、無理に走らせたり階段を上らせたりするのも逆効果です。
つい焦っていろいろやってしまいたくなりがちですが、無理をさせないように気をつけてあげてくださいね。
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老犬を太らせたいときによくあるQ&A

ここでは、老犬を太らせたいときによくある疑問についてお答えします。
まとめ|老犬を太らせるためにもまずは体重維持を目標にしよう!

老犬が痩せてしまう原因はさまざまで、単に食事量が足りていないなどであれば体重を増やすことも可能ですが、思ったように体重が増えないことも少なくありません。
実際、私が愛犬の体重を増やすために食事量を増やしたり温活したり、適度な運動を取り入れましたが、がんなどの持病もあり3.6kg⇒4.2kgが限界でもとの体重4.6kgに戻すことはできませんでした。
老犬は高齢になればなるほど、体の機能が衰えていくため、なかなか体重が増えないものです。
まずは今の体重をこれ以上減らさないことを目標にし、焦らずに少しずつ体重を増やす工夫をしてみましょう。
また、食べていても痩せる場合は原因が病気ということもあるため、まずは一度動物病院を受診してみてくださいね。


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