【獣医師解説】老犬が吐いたあとの食事はどうする?絶食の目安と与え方

老犬がさまざまな原因で吐いた後、食事を与えてよいかどうか、迷いますよね。

そんなとき、
「すぐに食事をあげていいの?」
「どれくらい与えたらいいの?」
「絶食はした方がいいの?」

といった疑問をお持ちではないでしょうか?

実は、近年では絶食は短時間にし、早めに食事を与えた方がよいと言われています。

しかし、急にいつものご飯を与えることは避けるべきだということをご存じでしょうか?

この記事では、老犬が吐いたあとに確認すべきポイントや吐く原因、食事の与え方、やってはいけない注意点を獣医師がわかりやすく解説します。

最後までお読みいただき、老犬が吐いたあとの食事管理について、正しい対応方法を身につけましょう。

浅川雅清
獣医師

獣医師国家資格 / 動物介護士 / 犬の管理栄養士マスター / 日本獣医腎泌尿器学会認定医(2026年4月~) / Hillsフードアドバイザープログラム修了 / ノビバックワクチンアドバイザープログラム修了

浅川 雅清

獣医師歴10年。2016年4月から東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務。分院にて院長として勤務した後、フリーランスとして独立。現在は診療業務の他、往診や記事作成、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行う。

目次

【受診目安あり】老犬が吐いたときにまず確認したいこと

吐いたときの状況によって、様子見となるケースと、早めの受診が必要なケースに分けられます。

確認すべき内容の目安を、以下の表にまとめました。

 確認する内容 経過観察の可能性あり 早めに受診が必要
吐いた回数1回何度も繰り返す
吐く前後の様子元気がある
いつもと変わらない
ぐったりしている
反応が鈍い立てない
飲水の様子少量なら飲める
いつもと変わらない
水を飲んでも吐く
水も飲まない
吐物の内容未消化のフードを少量
黄色い胆汁のみ
白い泡のような胃液のみ
血が混じる
タール状の液体を吐く
未消化のフードが大量
便臭がする
ほかの症状なし下痢がある
痙攣を起こす
祈りの姿勢をとる
どこかを痛がる
呼吸が荒い
粘膜の色が白い
原因の心当たりなしいつもとは違うものを与えた
ゴミ箱を漁った
拾い食いをした
おもちゃを誤飲した
治療中の病気なしあり

あくまで目安ではありますが、早めに受診が必要な状態に当てはまる場合は、動物病院を受診することを推奨します。

老犬が吐いたあと食事はどうする?状態によって対応は異なる

老犬では成犬の頃と比べ、吐いた後の食事の再開にはより細かな注意が必要です。

老犬では、さまざまな原因で嘔吐が見られるため、吐いたときの状況により適切に対応する必要があります。

それぞれの対応を詳しく見ていきましょう。

①吐いた直後はすぐに食事を与えない

まずは消化管を休ませることを優先し、嘔吐が落ち着くまで食事は控えましょう

吐いた直後は、胃や腸がより敏感になっているため、すぐに食事を与えると再び吐く可能性があります。

特に老犬は成犬と比べ回復が遅く、繰り返し吐くと体力の低下につながります。

そのため、吐いた後に元気そうでも、最低限の時間は状態を確認することが重要です。

②絶食時間の目安は体調によって変わる

一般的には、3~6時間程度を目安に絶食を行い、長くても12~24時間以内にとどめることが目安となります。

現在では、長期間(特に48時間以上)の絶食は、逆に体調の回復を妨げる可能性があると報告されています。

そのため、絶食は短時間で済ませることが一般的です。

ただし、老犬の場合はさまざまな持病を持っていることが多いため、絶食時間も状態により大きく変化する可能性があります。

自己判断せず、まずはかかりつけの獣医師に相談するよう心がけましょう。

③水も一気に飲ませず少量ずつ様子を見る

飲水に関しても食事と同様に、吐いた直後は胃や腸を刺激する可能性があるため、30分程度は水を飲ませないようにしましょう。

ただし、長時間の絶水は脱水を引き起こし、老犬の場合は逆に体調を悪化させる原因となりかねません。

また、飲ませ始める際も一気に大量の水を飲ませると、そのまま吐いてしまうこともあります。

最初はスプーン1杯程度の少量から始め、愛犬の状態を見ながら与えるようにしましょう。

④老犬では若い犬より様子見を長引かせない

成犬では体力があるため様子を見ることができますが、老犬の場合は既に体力が低下していることも少なくありません。

そのため、老犬の場合は小さな体調の変化でも様子見をしすぎず、早めに動物病院を受診するよう心がけましょう。

もちろん、吐いたときの様子によっては動物病院を受診せず安静にし、状態を確認することで回復するケースもあります。

ただ、私自身の経験として、「少しの間なら大丈夫だろう」と様子を見てしまい、急に体調が変化して治療が困難になったケースもありました。

様子を見るか迷ったときは、早めに動物病院を受診しておくと安心です。

老犬が吐いたあとに食事を再開するときの5つのポイント

ここまでは、老犬が吐いたときに受診すべき目安と、食事を再開するタイミングについて解説しました。

では、動物病院を受診せず食事を再開する場合は、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

成犬とは異なり、老犬では慎重に食事を再開する必要があります。

5つのポイントをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

①まずは少量から再開する

まず、食事を再開するときは必ず、ごく少量の食事から始めます。

目安としては普段の食事量の1/4以下、もしくはドライフード数粒程度がおすすめです。

いきなり通常量を与えると胃や腸に負担がかかり、再び吐く可能性が高まります。

食後数時間状態を確認し、再度吐いたり下痢したりする様子がなければ、次の食事で少しずつ量を増やしていきましょう。

このように、食べやすいように少量ずつ、かつ回数を増やし、徐々にいつもの量に戻していくことが基本となります。

②消化しやすい形にして与える

吐いた後にドライフードをそのまま与えると、胃や腸の負担となり再び吐く可能性が少なくありません。

そのため、一時的にでも消化しやすい形状にしたうえで食事を再開することがとても大切です。

特に老犬では、成犬と比べ胃や腸がより刺激を受けやすいことも少なくありません。

具体的な方法として、

  • ドライフードを細かく砕く
  • ドライフードをお湯でふやかす
  • ウェットフード中心のご飯にする
  • 消化器系の療法食に切り替える

といった方法があります。

愛犬の様子を見ながら、適切な方法を選んであげましょう。

③ふやかしたフードやウェットフードを活用する

前述の通り、ふやかしたドライフードやウェットフードを使用することもおすすめの方法の一つです。

一般的に、ドライフードと比べふやかしやウェットフードは、胃や腸への負担が少ないと言われています。

また、水分を多くすることで同時に水分も摂取でき、脱水への対処としても有効です。

ただし、老犬の嗜好性によっては、ふやかしやウェットフードを好まない場合があります。

その場合は、他の方法を試すようにしてあげましょう。

④一度に多く与えず回数を分ける

一度に大量の食事をすると、胃や腸に負担がかかりやすくなります。

そのため、老犬が吐いた後の食事は、1回の量を減らし何回かに分け、回数を増やして与える方法が有効です。

例えば通常1日2回の食事を、4~5回に分けて与える、といった方法です。

特に老犬では、成犬と比べてより1回の量を減らし、こまめに与える方が胃腸の負担を軽減できます。

回数や量に関しては、かかりつけの獣医師と相談したうえで決めると、より安心して与えることができるでしょう。

⑤問題がなければ数日かけて通常食へ戻す

老犬の場合は、急に通常の食事内容に戻してしまうと、再び吐いてしまう可能性が高まります。

そのため、体調に問題がない場合は、

  • ふやかす時間を徐々に短くする
  • 回数を徐々に減らす
  • 1回量を徐々に増やす
  • ウェットフードの割合を徐々に減らす

といった方法で、ゆっくり通常の食事内容に戻しましょう。

もし、戻していくなかで嘔吐や下痢などの症状が再発する場合は、食事に問題があったり、病気が原因で吐いていたりする可能性があるため、動物病院を受診するようにしましょう。

そもそも老犬はなぜ吐く?考えられる5つの主な原因

ここまでは、実際に老犬が吐いた後に食事を再開する際の注意点や方法について解説しました。

では、そもそもなぜ老犬は吐いてしまうのでしょうか?

その原因を知っておくと、今後老犬が吐いたときに判断や対処がしやすくなります。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①フードが合わない、フードの急な切り替えの影響

私自身の経験上、もっともよくある原因として、フードが合わなかったり、フードを急に変更したりすることが挙げられます。

フードに含まれる成分やそのバランスが合っていない場合や、成分にアレルギーがある場合は、胃や腸に負担がかかり吐くことが少なくありません。

特にフードの急な切り替えは、胃や腸に負担を与えるため、約10日ほどかけて徐々に切り替えることが大切です。

日数今までのフード新しいフード
1日目90%10%
2日目80%20%
3日目70%30%
4日目60%40%
5日目50%50%
6日目40%60%
7日目30%70%
8日目20%80%
9日目10%90%
10日目0%100%

上記のように、10日後頃に新しいドライフードにすべて切り替えるようにすると良いでしょう。

特に老犬では、成犬と比べてより時間をかけて切り替えることがおすすめです。

②食べすぎや早食い、空腹時間の長さによる負担

次によくある原因としては、

  • 一度に多く食べすぎる
  • 早食いをする
  • 空腹時間が長すぎる

といった、不適切な食事の量やタイミングによるものです。

特に老犬では、成犬のときには問題がなかった量であっても、食べ過ぎにより吐くことも少なくありません。

その場合は、一日の食事回数を増やし、1回量を少なくすることで対処しましょう。

空腹時間が長すぎる場合も、同様に食事回数を増やすことで、吐かなくなることがあります。

また、早食いをすると、その勢いで胃が刺激され吐くことも多いです。

早食い防止皿などを使用し、早食い対策を行いましょう。

老犬の食事回数に関しては、以下の記事をご覧ください。

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③加齢による消化機能の低下で吐きやすくなる

老犬では、年齢とともに消化酵素の分泌や消化管の働きが低下し、食事を消化するまで時間がかかることがあります。

また、胃や腸が敏感になっていることもあり、その結果、ちょっとした刺激でも吐きやすくなる傾向があります。

そのようなときは、前述のように、食事に消化しやすくなるような工夫をしてあげましょう。

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④環境変化のストレスを感じる

老犬は、消化管だけでなく、環境変化によるストレスにも敏感です。

具体的には、

  • 家族のライフサイクルが変化する
  • 新しいペットを迎える
  • ペットホテルに預けられる
  • 引っ越しをする

といった変化でも吐くことが少なくありません。

このような変化が事前にわかっている場合は、吐く前から前述のような工夫を行うとよいでしょう。

⑤持病や体調不良

老犬では、腎臓病や消化器疾患など、さまざまな病気が原因で吐くこともあります。

特に老犬では、成犬と比べて病気が隠れているケースが多く、繰り返し吐くときは注意が必要です。

私自身の診察においても、成犬より老犬の方が、より嘔吐の背景に病気がある可能性が高いと感じています。

些細な体調の変化であっても、早めに動物病院を受診することが大切です。

老犬が吐いたあとにやってはいけないこと

では、老犬が吐いた後に行ってはいけないよくある間違いは、どのようなものなのでしょうか?

特に老犬では、誤った対応は症状を悪化させる原因になります。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①吐いた直後にいつも通りの食事量を与える

吐いた後にいきなり通常量の食事を与えると、胃や腸に負担がかかり、再び吐く可能性が高まります。

特に老犬では、成犬と比べ胃や腸がより刺激を受けやすいことも少なくありません。

前述の通り、食事を再開するときは必ず、ごく少量の食事から始めましょう。

食後数時間状態を確認し、再度吐いたり下痢したりする様子がなければ、次の食事で少しずつ量を増やしていきましょう。

また、一時的にでも消化しやすい形状にしたうえで食事を再開することがとても大切です。

②水を一気に飲ませる

老犬が嘔吐すると、脱水を心配してつい大量に水を飲ませてしまいますよね。

しかし、これは逆効果です。

食事と同様に、水も大量に飲んでしまうと、再び吐いてしまう可能性が高まります。

少量ずつ、様子を見ながら与えることが基本です。

③人の食べ物や脂っこいものを与える

老犬が吐いた後、食欲が低下している場合、つい嗜好性の高い人の食べ物や脂っこいものを与えてしまいますよね。

しかし、こちらも逆効果になるため、注意が必要です。

人の食べ物や脂っこいものは、消化に悪い傾向があり、胃や腸に負担をかける可能性があります。

その結果、老犬の状態がさらに悪化することにつながりかねません。

まとめ|老犬が吐いたあとの食事は自己判断しすぎず迷ったら早めに獣医師に相談

老犬は成犬と比べ、さまざまな刺激に敏感な傾向があります。

老犬が吐いたあとは、まず状態を冷静に観察し、受診が必要かどうかを見極めることが第一のステップです。

また、食事はすぐに再開せず、一定時間の絶食・絶水を行い、問題がなければ少量から始めましょう

特に老犬は体力や回復力が低下しているため、若い犬よりも慎重な対応が求められます。

少しでも体調に異変を感じた場合は、自己判断せず早めに獣医師へ相談することが、愛犬の健康を守る最善の方法です。

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この記事を書いた人

浅川 雅清のアバター 浅川 雅清 獣医師

2016年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。
同年よりペットショップ併設の動物病院にて勤務。
犬・猫・うさぎ・ハムスターの診察を中心に、ペットショップの生体管理や採用業務、ペット用品の開発に携わる。
1年間の院長経験を経て、2024年よりフリーランスとして独立。
現在は診療業務の他、オンラインでの医療相談、往診、コラム作成、SNS監修、多数の商品監修などを行っている。

【保有資格】
【資格】
獣医師国家資格 / JADP認定動物介護士(R) / 犬の栄養管理士マスター / 日本獣医腎泌尿器学会認定医(2026年4月~)/ Hillsフードアドバイザープログラム修了 / ノビバックワクチンアドバイザープログラム修了

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