愛犬が腎臓病と診断され、いつものご飯を食べないとき、とても悩みますよね。
そんなとき、
「なぜご飯を食べないのだろう?」
「何を食べさせたらいいのだろう?」
「このまま様子を見て大丈夫かな?」
といった疑問をお持ちではないでしょうか?
実は、腎臓病の老犬は、さまざまな理由で食欲が低下します。
体調不良が原因の可能性があるため、様子を見ずに早めに対処することが重要です。
また、そのようなときに役立つ工夫がたくさんあるのをご存じでしょうか?
この記事では、老犬が腎臓病で食べない理由と対処法、受診の目安、やってはいけないことを獣医師がわかりやすく解説します。
最後までお読みいただき、今日からの愛犬のケアに取り入れていただければ幸いです。
そもそも老犬が腎臓病でご飯を食べないのはなぜ?主な7つの理由

まず、なぜ老犬が腎臓病になるとご飯を食べなくなるのでしょうか?
犬は年齢を重ねると、好き嫌いが強くなり好きなものしか食べなくなる傾向があります。
一方で、腎臓病から体調が悪くなることで、ご飯を食べなくなることも少なくありません。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①療法食のにおい・味・食感が合わないことがあるから

愛犬が腎臓病と診断された場合によく使われるのが、腎臓病用の「療法食」です。
この療法食では、おいしさが損なわれている製品が多く、食べなくなることも少なくありません。
なぜなら、腎臓病用の療法食では、
- タンパク質の量を制限
- 脂質の量を増加
- リンやナトリウムの量を制限
といった設計がされているためです。
リンやタンパク質が制限されると、おいしさが損なわれることが多く、カロリーを補うために脂肪分を増やしていることが多いため、その風味や食感が合わないことも少なくありません。
②脱水やだるさで食欲が落ちやすいから

次に、老犬が腎臓病になった場合、脱水することでだるさを感じたり食欲が低下したりして、ご飯を食べなくなることが少なくありません。
腎臓は本来、体の中の老廃物を濃縮し、尿で排泄する機能を持っています。
しかし、腎臓病になるとその機能が低下し、薄い尿が大量に排泄され、体から出ていく水分量が増加するため、脱水が起こりやすくなります。
そのため、腎臓病の老犬では、脱水対策として皮下点滴を行うことが一般的です。
③尿毒症で吐き気やむかつきが出るから

腎臓病の老犬では吐き気やむかつきはよく起こる症状で、その違和感からご飯を食べなくなることもよくあります。
前述の通り、腎臓は体内の老廃物を排泄する機能を持っていますが、その機能が低下し、体の中に「尿毒素」が溜まる状態を「尿毒症」といいます。
腎臓病が進行するにつれて、尿毒症が起こる可能性が高まり、その際の症状として、
- 嘔吐
- 下痢
- 痙攣
- 食欲不振
などが見られることが少なくありません。
これらの症状が見られた場合は、一度獣医師に相談することも忘れないようにしましょう。
④口の中の違和感や不快感があるから

前述の尿毒症の影響で、口内炎が起こることがあります。
口内炎による口の痛みや違和感から、老犬がご飯を食べなくなることが少なくありません。
また、腎臓病の他に、歯周病や口腔内腫瘍、顎骨骨折などの口腔内の病気により、痛みや違和感を覚えてご飯を食べなくなることもあります。
そのようなときには、
- 食欲はあるが食べない
- 食べようとするが途中でやめる
- 食べこぼす
- 食べにくそうにする
といった様子が同時に見られることもあるため、その際は一度、お口の中にトラブルがないか獣医師に確認してもらいましょう。
⑤腎臓病以外の不調が重なっていることもあるから

老犬がご飯を食べなくなる病気は、腎臓病のみではありません。
具体的な原因として、
- 肝臓病
- 感染症
- 腫瘍
- 心臓病
- 消化器疾患
- 口腔内疾患
- 脳神経疾患
など、さまざまな病気が考えられます。
私自身の診察においては、特に「僧帽弁閉鎖不全症」や「膵炎」といった病気の併発をよく経験します。
腎臓病として向き合っていくなかで、老犬がご飯を食べなくなった場合は、これらの病気が隠れていないか、全身のチェックを行うことが大切です。
⑥通院や投薬のストレスを感じているから

老犬がさまざまなストレスを感じることで、食欲が低下しご飯を食べなくなることも少なくありません。
特に愛犬が腎臓病と診断された直後は、こまめに受診し血液検査や点滴などの処置を行うことが多いです。
また、病状が進行している場合は、入院で治療を行うことも少なくありません。
さらに、自宅で毎日投薬を行うよう、獣医師から指示が出ることがあります。
このようなさまざまなストレスが原因となり、老犬がご飯を食べない場合は、獣医師と相談しストレスを減らしながら治療を行うようにしてあげましょう。
⑦加齢によって食欲や嗅覚が落ちやすくなっているから

腎臓病のみではなく、加齢による生理的な影響が重なることで、老犬がご飯を食べなくなっている可能性も考えられます。
老犬では、年齢を重ねることで嗅覚や味覚が鈍くなり、ご飯への関心が低下することが少なくありません。
また、体調の変化により嗜好性が変わり、食べたいフードの種類が変わることもあります。
そのようなときは、これから解説する「まず試したい6つの対処法」を試し、嗜好性を高めることで、ご飯を食べるようになるかもしれません。
老犬が腎臓病でご飯を食べないときにまず試したい6つの対処法

ここまでは、腎臓病の老犬がなぜご飯を食べないのかについて解説しました。
では、その対策として、実際にどのような方法があるのでしょうか?
食べないときは、無理に食べさせるのではなく「食べやすくする工夫」が重要です。
ちょっとした工夫で食欲が戻ることも少なくありません。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①ドライフードをふやかす

まず、どの方法よりも簡単で、すぐにできることとして、ドライフードをお湯でふやかす方法があります。
ドライフードをふやかすと、柔らかくなって食べやすくなるだけでなく、風味が出てより嗜好性が高くなります。
噛む力が弱くなった老犬や、口の違和感がある場合にも使える方法です。
ただし、水分を加えた分、かさが増えるため、最初は少し量を減らして行うとよいでしょう。
また、温度も熱すぎず、人肌程度の温度であることを確認してから与えましょう。
ドライフードのふやかし方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

②フードを少し温めて香りを立たせる

次に、ウエットフードであれば、電子レンジなどで人肌程度に温める方法があります。
目安として、ウエットフード50gなら500Wの電子レンジで15秒程度から、温度を見ながら調節しましょう。
温めることで風味が増し、食欲が低下したり、嗅覚が弱まっていたりする老犬でも、フードに興味を示しやすくなることが多いです。
特に冷蔵庫で保存している場合であれば、与える前に温めることで、より食べやすくなるでしょう。
③1回量を減らして少量ずつ与える

老犬になると、一度にたくさんのご飯を食べることが難しくなることも少なくありません。
その場合は、少量に分けて回数を多く与える方法が有効な場合があります。
消化管への負担を軽減し、結果的に1日の総摂取量が増えることも期待できます。
老犬の食事回数について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

④食べやすい姿勢や食事環境を整える

老犬は関節のトラブルを抱えていることがあり、ご飯を食べる際の姿勢を取ることが難しい場合があります。
その場合は、関節に負担がかからない高さに食器を調整したり、滑りにくい床でご飯を与えたりすることが大切です。
食事環境のストレスが減ることで、より安心して食べられるようになります。
老犬の適切な食事環境について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
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⑤トッピングをする

ドライフードだけではご飯を食べない場合は、より嗜好性の高いトッピングを活用する方法があります。
特に、腎臓病に向けたふりかけやウエットフードなどを加えることで、嗜好性が高まり食いつきが改善することがあります。
ただし、一般的な食材はリンやタンパク質が多い場合もあるため、必ず獣医師に相談したうえで選びましょう。
⑥療法食の種類や形状を見直す

現在は、さまざまなメーカーから犬用の腎臓病の療法食が発売されています。
メーカーによりドライフードの粒の大きさや風味が異なるため、変更することで療法食を食べるようになることも少なくありません。
私自身の経験では、多くのドライフードがお肉を中心とした風味であるため、お魚の風味で作られた療法食を与えると、食いつきがよいと感じています。
また、ウエットフードのなかでも、形状がペーストなのか、具材の形が残っているのかなどによって好みが分かれます。
さらに状況によっては、獣医師と相談のうえ、より嗜好性の高い猫用の療法食を一時的に使うことも選択肢の一つです。
愛犬に合った療法食を探してあげましょう。
【こんなときは即受診!】老犬が腎臓病でご飯を食べないときに動物病院を受診する目安
- 水も飲まない
- 半日〜1日以上ほとんど食べない
- 嘔吐や下痢をしている
- 震えている
- ぐったりしている
- 痙攣を起こしている
- 粘膜の色が白い
このような様子が1つでも見られる場合は、腎臓病が進行していたり、ほかの病気が併発したりすることで、食欲が低下している可能性があるため、早めに動物病院を受診しましょう。
老犬が腎臓病でご飯を食べないときにやってはいけないこと

では、老犬が腎臓病でご飯を食べないときに、やってはいけないこととはどのようなことなのでしょうか?
ご飯を食べさせたいあまり、良かれと思ってやっていることが逆に愛犬の体調を崩す原因となることも少なくありません。
私自身の診察においても見られる、飼い主様のよくある間違いについて解説します。
①自己判断で療法食をやめる

まず、食べないからといって自己判断で療法食を中止することは避けましょう。
前述の通り、腎臓病用の療法食は嗜好性が低いため、好んで食べないケースも少なくありません。
しかし、食事内容によっては、腎臓への負担が増えて病状が進行する可能性も否定できません。
現在は腎臓病用の療法食も改良されていて、嗜好性が高いものも発売されています。
食べない場合でも、まずは獣医師に相談しましょう。
②「食べない」からと何でも食べさせる

次に、少しでもたくさん食べさせたいからといって、食べてくれるものを何でも食べさせることは避けましょう。
特に人間の食べ物では、老犬にとって体に負担になるような栄養素や成分が含まれていることも少なくありません。
私自身の診察では、脂肪分が高いお肉や乳製品を与えて、膵炎を引き起こした例を経験しています。
また、腎臓病用の療法食でも、食べさせ過ぎるとお腹に負担がかかり、嘔吐や下痢の原因となります。
老犬が食べてくれると、どんどん与えたくなる気持ちは分かりますが、適量を守るよう心掛けましょう。
老犬の適切な食事量について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

③「少し食べているから大丈夫」と様子見を続ける

こちらもよくあるケースですが、私が「食欲はありますか?」と尋ねると飼い主様は「あります」と答えます。
しかし、実際に食べている量を確認すると少量しか食べておらず、一日に必要な量を摂取できていないことも少なくありません。
「少し食べているから様子を見よう」と考えてしまうと、どんどん体重が減り、より体力が低下し回復に時間がかかる状況に陥ります。
食べていることに安心せず、食事量の変化はしっかり確認するようにしましょう。
ただし!老犬の腎臓病では「まず食べること」が優先される場合もある

老犬の腎臓病では、日頃のケアとして食事管理はとても重要です。
しかし、ときには食事の内容よりも「まず食べること」が優先される場合もあります。
では、食べることが優先される理由はどのようなものなのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①何も食べない状態が続くと体力低下につながる

老犬の腎臓病では何も食べない状態が続くと、筋肉量の低下や体力の低下を引き起こし、回復するにも時間がかかるようになってしまいます。
特に老犬では、数日ご飯を食べないだけでも、大きく体重が減ることは少なくありません。
そのため状況によっては、獣医師と相談のうえ、療法食以外のフードを選択する場合もあります。
②病状によって優先すべきことが変わる

老犬の腎臓病では、病状によって優先される対処法が異なります。
初期の段階では、まだ体力の低下や症状が軽度であるため、腎臓病用の療法食が治療の中心となります。
しかし、病状が進行するにつれて体力の低下や症状が重たくなると、点滴が治療の中心となることが少なくありません。
このように、老犬の病状によって優先すべき対処法が異なります。
愛犬にとって、今どの対処が必要なのか、かかりつけの獣医師と相談しながら方向性を定めていくことが大切です。
まとめ|老犬が腎臓病でご飯を食べないときは様子見せず早めに相談を

老犬の腎臓病では、さまざまな要因でご飯を食べないことがあります。
病気に伴う場合もあれば、そうでない場合もあり、食べさせるには多くの工夫が必要になることも少なくありません。
一方で、老犬がご飯を食べない状態が続く場合は、早めの受診が重要です。
特に以下のような症状がある場合は、すぐに動物病院へ相談しましょう。
- 嘔吐や下痢をしている
- 震えている
- ぐったりしている
- 痙攣を起こしている
- 粘膜の色が白い
- 口臭がする
- 体重が減る
これらは腎臓病の悪化や尿毒症のサインの可能性があります。
また、受診の際には、「いつから」「どれくらいの量を食べなくなったか」といった点を正確に伝えることで、スムーズに診察を受けることができます。
「もう少し様子を見よう」と判断せず、早めに動物病院を受診することが、大切な家族の健康を守る第一歩となります。


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