もし今この場で災害が起きたら、愛犬を守りれきれるだろうかと不安に思う飼い主さんは少なくありません。
老犬は歩行や排泄などの問題を抱えていることも多く、避難時はもちろん、避難後も心身共に大きな負担がかかることが予想されます。
私も地震が多い地域の海沿いの家で暮らしていた時期があり、1人で老犬と乳幼児を抱えて避難ができるだろうかと、とても不安に思っていたことがありました。
その経験から、ペット災害危機管理士の資格を取得し、老犬のための備蓄品リストや避難所での対応など、老犬ならではの防災対策を多くの飼い主さんに知っておいて欲しいと思っています。
老犬のことを考えて在宅避難を前提に準備するのはとても大事なことですが、それすら叶わない状況となる可能性もあることを忘れてはいけません。
愛犬のために、ぜひ最後までご覧ください。
老犬は特に注意!災害時に気をつけたい健康トラブル

災害時は、人と同じように愛犬も大きなストレスにさらされます。
ストレスは自律神経やホルモンの働きに影響を与え、食欲不振や胃腸トラブル、持病の悪化などの様々な不調を引き起こす可能性がある恐ろしいものです。
特に、もともと体内のあらゆる機能が低下しているであろう老犬は、一度ダメージを受けるとスムーズな回復が難しいこともあります。
ストレスによる体の負担が、一時的な体調不良では済まなくなることも珍しくありません。
また、電気や水道などのライフラインが絶たれた状態では、熱中症や脱水症のリスクもあります。建物の倒壊などでケガをしてしまうこともあるでしょう。
そのような状況下では、動物病院で診察をしてもらうこともなかなか難しいと予想されます。愛犬を守るために、飼い主さんがあらゆる準備をしておかなければなりません。
老犬の防災対策としてまず行うべきこと

老犬のための防災対策の基本中の基本として、マイクロチップ番号と登録者情報の確認・迷子札の作成・連携できる仲間をご近所に作るの3つがあげられます。
マイクロチップはペットショップやブリーダーから愛犬を迎え入れたときにすでに装着されている事が多いと思いますが、番号まで覚えている飼い主さんは多くないでしょう。
愛犬の防災カルテやメモ紙などでもいいので、控えて財布の中などいつでも目につくところに保管してください。
もし、マイクロチップ未装着の場合は、動物病院に装着の相談をしてみましょう。※装着することで体に大きな負担はかかりませんが、老犬の体調によっては難しい可能性があります。
東日本大震災では、マイクロチップは装着されていても飼い主情報の登録をしておらず、帰宅ができない迷子のペットもみられました。※参考:東日本大震災における被災動物対応記録集
そのため、可能であれば装着・装着後は飼い主情報を忘れずに登録※するようにしてください。※参考:日本獣医師会(AIPO)へのマイクロチップ情報登録の変更について
また、迷子札や鑑札もマイクロチップと同様にとても重要なものです。迷子札はフック付きでDリングなどにぶら下げるタイプのものが多いですが、私は迷子札を鑑札と一緒に直接首輪やハーネスに縫い付けておくことをおすすめします。
これまでいくつも迷子札を試しましたが、ぶら下げるタイプでは取れてしまうことが多くありましたよ。
そして、ご近所に連携できる仲間を作ることも欠かせない防災対策になります。
あまりご近所付き合いがない方もいると思いますが、愛犬を預けられるほどの関係性でなくても構いません。「あの子はあそこの家のわんちゃんだ」と認識してもらえているだけでも違います。
災害は、互いに助け合って乗り越えていくものです。まずは散歩中に挨拶を交わすことからでも初めて見てください。
東京都23区の老犬と一緒に行ける避難所を調査

日本では、環境省の「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」により、災害時はペットと同行避難することが原則とされています。
しかし実際、全ての避難所にペットと同行できる訳ではありません。また、避難所まで同行は可能でも、同伴避難(同じ居住スペースで生活する)ができるところはほとんどないというのが実情です。
そこで今回私は、日本で犬の登録頭数が最も多い※東京都の、23区それぞれの避難所の方針を調査しました。※厚生労働省 都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等(平成26年度~令和6年度)
その結果、東京都23区においては、どこもペットと同行避難は可能※ですが、同伴避難できる避難所はゼロだと分かりました。※2026年10月時点。一部制限あり。
全ての区の公式サイトで「人の居住区間とペットの飼育スペースは分離する」という旨が記載されています。
ペットの飼育スペースは、区立の小中学校の校庭などにテントを設置し、その中にケージを積み上げるなどして確保する区が多いようです。
しかし、テントの設置が困難な状況である場合は、昇降口等をペットスペースとする区もあれば、ペットの受け入れ自体を行わないとする区もあるなど、対応は様々です。
また、公式サイトでもペットとの避難について詳細な情報が記載されている区とそうではない区があります。
全国どこも同様と考えられるので、災害時に焦らないように、事前にお住まいの地域のペット同行避難所とその方針について確認しておきましょう。
また、自宅に被害がないときや、自宅にいても命の危険性がないときは、在宅避難が推奨されます。
老犬の防災グッズ備蓄品リスト【自宅用のストック】
- いつものペットフード(最低5〜7日分。可能であれば2週間分)
- 食いつきのいいウェットフードやフリーズドライフード(総合栄養食がおすすめ)
- 水(最低5〜7日分。可能であれば2週間分)
- 服用している薬、療法食(最低5〜7日分。可能であれば2週間分)
- キャリーバッグ・クレート(自立するもの)
- 予備の首輪やハーネス、リード(新品)
- ペットシーツ(最低愛犬の1日トイレ回数×7日分。できれば2週間分)
- ペット用オムツ
- タオル(圧縮タイプがおすすめ)
- スリッカーブラシ
- ペット用ウェットシート
- ドライシャンプー
- ビニール袋(排泄物の処理など多用途に使えるので多めに)
- お気に入りのおもちゃ
- お気に入りのブランケット(冬期)
- 養生テープ(ケージの補修などに使えるほか、情報を書き込める)
- マジックペン
上記のリストにある物を、自宅の中で最も頑丈な部屋の取り出しやすいところに備蓄しておきましょう。
災害の影響で物流が停滞した場合、ペットフードが支給されるまでは早くても1週間程度はかかると考えられています。
ただし、当然十分な量が確保できるとは限らず、また愛犬が普段食べているフードと同じものが手に入る可能性は低いでしょう。療法食が必要な愛犬などは特に難しいと言えます。
そのため、上記のものを日頃からストックしておき、そのうち3〜5日分程度を非常用持ち出し袋へ入れておくことが大切です。
なお、太字で示したものは、老犬には特に備蓄・非常用持ち出し袋に入れていて欲しいと私が感じたものです。
災害時のストレスで食欲が低下しているときでも少しでも食事を取りやすいように、嗜好性が高いウェットフードやフリーズドライフードを用意しておくことをおすすめします。
ローリングストック方式で備蓄しておくと、日頃から備蓄品の味も分かっているので、食いつきをサポートしやすくなるでしょう。
普段から少し多めに購入し、使った分を買い足すことで、常に一定量の備蓄を保つ方法。
\ 防災10点セットや持ち出し用袋をチェック/
老犬の防災グッズ持ち出し袋用リスト【避難時の準備】
- いつものペットフード(最低3〜5日分。可能であれば1週間分)
- 食いつきのいいウェットフードやフリーズドライフード(総合栄養食がおすすめ)
- 水(最低3〜5日分。可能であれば1週間分)
- 服用している医薬品、療法食(最低3〜5日分。可能であれば1週間分)
- キャリーバッグ・クレート(自立するもの)
- 予備の首輪やハーネス、リード(新品)
- ペットシーツ(最低愛犬の1日トイレ回数×3〜5日分。できれば1週間分)
- ペット用オムツ
- タオル(圧縮タオルなどがおすすめ)
- スリッカーブラシ
- ペット用ウェットシート
- ドライシャンプー
- ビニール袋(排泄物の処理など多用途に使えるので多めに)
- お気に入りのおもちゃ
- お気に入りのブランケット(冬期)
- 洋服(防寒・冷感など時期に合わせて。避難先の抜け毛対策にも)
- 靴や靴下
- 養生テープ(ケージの補修などに使えるほか、情報を書き込める)
- マジックペン
- 愛犬の防災カルテ
在宅避難が難しい状況になったときの備えとして、避難所へ同行避難するときの持ち出し用袋(20〜40リットル程度の容量のリュック)の準備も必要です。
避難所にはペット用の物資が用意されていないことが多く、ペットのために5日分の食料を持ってくるように指示している避難所もあります。
ただ、背負って走れる程度の重さにすることも忘れないようにしましょう。ペットを抱きかかえて移動する可能性もあります。
もし自宅に戻れる状況なのであれば、リュックの中身が無くなったら補充しに戻れば良いので、避難の妨げにならない重さに調整してみてください。
フードは小分けにしたり、小容量サイズを活用するといいでしょう。嵩張りやすいペットシーツは薄型を選び、圧縮タオル類を購入しておくのもおすすめです。
なお、持病で毎日の補液が必要な愛犬は、輸液バッグが防災リュックの中で場所をとってしまうと思います。
重さも増すので、家族で分担して荷物を持つ、タオルは人間用から割り当てる、ドライシャンプーはウェットシートで代用するなどの工夫が必要です。
ただ、愛犬の防災カルテは老犬には特に大切なものなので必ず入れるようにしてください。「ペット防災カルテ」「ペット防災手帳」などとネットで検索すると、印刷して記入できるテンプレートが出てきます。
防災カルテがあれば、救護が必要になったときでも、愛犬に必要なケアや治療内容を正しく伝えることが可能です。
愛犬が何の病気でどのステージにいるのかや、服用中の薬の名称とその量などを正確に把握していない方も多いため、手書きで良いので必ずカルテを作成するようにしましょう。
また、防災カルテがあると、万一はぐれてしまったときにも、愛犬の引取りがスムーズにいきやすくなります。
\ 防災10点セットや持ち出し用袋をチェック/
持病のある老犬が特に重要な防災対策

備蓄品リストでも記載しましたが、持病のある老犬は、日頃から飲んでいる薬や療法食を常に2週間分は余分に用意しておきましょう。
災害時には、自治体や獣医師会、ボランティア団体などの連携により、動物救護本部などが設置されることがありますが、支援物資の数や種類、治療できる範囲は限られています。
そのため、かかりつけの獣医師に災害時の備蓄のためであることを伝えて、少し多めに処方してもらうと良いでしょう。
私も、かかりつけの獣医師から「少し多めに持っていた方がいい」といつも言われていました。
私としては、高額な薬なので本当は少しでも減らして費用を抑えたかったのですが、愛犬の通院日にどうしても病院へ行けないことがあり、予備の薬の大切さを痛感しました。
また、皮下補液やインスリン投与、リハビリなどで頻繁に動物病院に通っているような愛犬の場合は、獣医師に相談して飼い主さんが自宅でも行えるよう事前に練習しておくことが大切です。
留守番中の老犬のための自宅の防災対策

老犬は思うように体が動かないことも多いので、できるだけ被害を抑えられるよう、愛犬が留守番中に過ごすスペースには以下のような対策をしておきましょう。
- ケージを動かないよう固定をする
- 家具を固定する
- 落ちてくるような物を置かない
- 窓にガラス飛散防止フィルムを貼る
- 水飲み容器を複数箇所に設置する
- 留守番カメラを設置する
- 床の滑り止め対策をする
- サークルなどで行動をある程度制限する
地震等でケージが動いてしまうこともあるので、ケージの下に滑り止めシートを貼っておきましょう。
そして周りの家具も倒れることがないように固定してください。この時同時に、棚の上などから物が落ちないようにしておくことが大切です。
老犬は落下物からすぐに立ち上がって逃げられない可能性がありますし、落下で壊れた物や破損した窓ガラスの破片でケガをしてしまう可能性もあります。
また、災害時はすぐに帰宅できるとは限りません。東日本大震災のときには、普段は自宅まで車で20分程度のところが、なんと7時間もかかってしまった人もいます。
公共交通機関の停止や浸水や倒壊による通行止め、各所の混乱など、自宅が近くても辿り着くまでに何時もかかってしまうことが実際にあるのです。
さらに、勤め先によっては、災害時は帰宅させずに社内待機を命じるところもあります。
そうなってしまった時でも、せめて水だけでも飲めるように、愛犬が飲みやすい場所に水飲み場を複数箇所設置しておきましょう。(水飲み容器の滑り止め対策もしておく)
なお、お留守番カメラを設置しておくと、災害時はもちろん、普段から愛犬の様子を確認することができます。
よく過ごす場所や過ごし方が分かっていれば、より防災対策も立てやすいのでおすすめです。お留守番カメラの機能によっては、声がけができることもありますよ。
災害時は正常に作動しない可能性もありますが、無料のお留守番カメラアプリなどもあるので、備えとして用意しておいて損はないでしょう。
老犬と避難所で過ごすときの夜鳴きやストレス対策

愛犬と同行避難すると、多くの場合は人の居住スペースとペットの飼育スペースは別の場所に設置されるため、残念ながら四六時中側に居てあげることはできません。
できる限り不安を解消し、愛犬が落ち着いて過ごせるように、事前に対策を知っておきましょう。
- 普段からクレートで過ごす時間をつくり、落ち着く場所にしておく
- 飼い主の匂いの着いた洋服などをクレートに入れる
- ペットの精神安定用のサプリメントを与える
- 朝と夕に散歩を行いリフレッシュさせる
老犬になるとすでにクレートに慣れている子も多いですが、外出が減ったことでクレートをあまり使わなくなってしまったという家庭もあるでしょう。
見知らぬ環境下でもクレートの中にいれば安心だと思えるように、日頃からクレートを部屋の中に設置しておき、その中で過ごす時間を作るようにするのがおすすめです。
また、ペット用の精神安定サプリメントを与えるという手段もあります。
鎮静剤のようで少し怖い響きがあるかもしれませんが、実は精神安定用のサプリは、老犬の分離不安や認知機能の低下による様々な行動をサポートするものとして、動物病院で処方されることもあるくらい一般的です。
ミルク由来成分やハーブなどを原料としたものが多く、できるだけ穏やかに過ごせるようにしてあげたいというときには事前にチェックしておくと良いでしょう。
なお、寝たきりの老犬や24時間介護が必要な老犬などは、避難所を運営している自治体や動物救護団体などに相談をしてみてください。
平常時ではないのでどうしても十分な救護が得られるとは限りませんが、少しでも愛犬に負担のない方法を模索することができるかもしれません。
また、そういった愛犬がいる中では特に在宅避難が推奨されますが、在宅では命の危険がある場合もあります。 この後は、車中泊について紹介しますので、合わせて参考にしてください。
老犬と車中泊で避難するときの注意点

車中泊は、在宅避難が困難なときや、離れて暮らす家族の家などの安全な預け先がないときにおすすめの避難方法です。
ただ、車中泊では体温管理とエコノミー症候群に注意しなければなりません。
車内は、住宅のように断熱構造が整っておらず、空調設備も不十分です。そのため外気温の影響を受けやすく、特に夏場は短時間で気温が上昇します。
スペースも限られるうえ、足腰が弱っていたり、寝たきりの老犬では、自分で涼しい場所へ移動することは困難です。
また、車のエアコンをつけたままの就寝は、一酸化炭素中毒を引き起こしてしまう可能性もあるため、飼い主さんが常に愛犬の体温管理を意識しなくてはなりません。
また、飼い主さん自身のエコノミー症候群にも注意が必要です。車内という限られたスペースに、食料や水など必要なものを詰め込むことで、体を伸ばして休むことが難しくなります。
さらには、災害時はトイレに行くことを我慢するあまり水分不足に陥る人が多いです。老犬を守れるのは飼い主さんだけなので、ご自身の体への気遣いも忘れないようにしましょう。
今回私は、2020年9月の大型台風の影響で愛犬2頭(13歳と10歳)を連れて車中泊を経験した飼い主さんに、車中泊で最も大変だったことも伺いました。
福岡県在住M・Nさんワンコ2頭と共に、車に必要な物を積み込みました。
その当時、うちの子は13歳と10歳で、13歳の子は環境が違うことがイヤなのかまったく寝れなくて…。大変そうでしたし、とても可哀想でしたね。
避難所のように離れ離れになることはなくても、車中泊もやはり簡単ではないですね。
可能な範囲で良いので、日頃から車で過ごすことに慣れさせておくことも大切だと言えるでしょう。
\ 防災10点セットや持ち出し用袋をチェック/
老犬の防災対策のよくある質問


ここでは、老犬の防災対策のよくある質問にお答えしていきます。
まとめ|老犬の防災対策、今日から始めよう


老犬は災害時のストレスによる健康負担が大きいことが予想されるため、日頃から防災対策をしておくことが大切です。
老犬ならではの防災対策として、特に大切なことをまとめました。
- 服用している薬や療法食があるときは、2週間ぶん程度備蓄しておく
- 皮下補液やインスリン注射等が必要な愛犬は、飼い主さん自身で行えるよう、獣医師から指導を受けておく
- 愛犬の防災カルテに病名・処方されている薬の名前と量などを記載しておく
- 食欲不振時でも栄養補給ができそうなウェットフードやフリーズドライフードなども備蓄しておく
- 落ち着いて過ごせるようなサプリも検討しておく
- 可能な限り在宅避難を検討し、車中泊では温度管理に特に気をつける
- 介護が必要な老犬と同行避難する場合は、できるだけ対応できるよう動物救護本部などにも相談する
ペットの防災対策が十分にできている飼い主さんの割合は、2割程度とされています。※アイペット損害保険株式会社 2026年版ペットのための防災対策に関する調査
環境の変化に影響を受けやすいシニア期の愛犬ために、しっかり備えておくことをおすすめします。
\ 防災10点セットや持ち出し用袋をチェック/










コメント