愛犬がシニア期を迎えると、「最近ごはんを残すようになった」「下痢や軟便が増えた」と感じる飼い主様も多いのではないでしょうか。
老犬では加齢にともない消化機能が少しずつ変化します。
そのため、若い頃と同じ食事を続けていても、消化不良を起こしやすくなることも珍しくありません。
また、時には病気が隠れている場合もあるため注意が必要です。
この記事では、老犬に消化不良が起こる原因やおすすめの食事、食事の与え方、受診の目安について獣医師が解説します。
まずは老犬に消化不良が起こる主な原因を確認していきましょう。
老犬の消化不良は食事のせい?4つの原因を解説

老犬の消化不良は食事だけが原因とは限りません。
加齢による変化や、ときには病気が関係していることもあります。
- 加齢による消化機能の低下
- 食事内容が体に合わなくなった
- 運動量の低下による胃腸機能の低下
- 病気が隠れている
原因によって適した対処法は異なるため、ここでは老犬に消化不良が起こる主な原因を理解していきましょう。
加齢による消化機能の低下

老犬では胃腸の働きが若い頃より低下する傾向がありますが、胃や腸の運動機能が弱くなると、食べた物をうまく消化・吸収しにくくなります。
また、老犬は消化液・消化酵素の分泌量や働きが低下することもあり、食後に胃もたれのような状態になる犬も珍しくありません。
加齢による変化はどうしても多かれ少なかれ避けられないものです。
その結果、次のような症状がみられることがあります。
- 食欲の低下
- 軟便や下痢
- 嘔吐
- おなかの張り
以前は問題なく食べられていた食事でも、年齢とともに負担になることがあるのです。
食事内容が体に合わなくなった

加齢により、これまで食べていたフードが犬の体に合わなくなることがあります。
脂肪分が多い食事や消化しにくい原材料を含むフードは、老犬の胃腸に負担をかける場合があります。
また、おやつの量が増えたり、人の食べ物を与えたりすることも消化不良の原因です。
とくに脂肪分が多いおやつや肉類を急に多く与えると、下痢や嘔吐を引き起こすことがあるので注意しましょう。
運動量の低下による胃腸機能の低下

老犬では散歩時間が短くなったり、寝ている時間が長くなったりすると、全身の代謝だけでなく胃腸の動きも低下しやすくなります。
適度な運動は腸のぜん動運動を促す役割がありますが、運動不足になると腸の動きが鈍くなり、食べ物が胃腸に長くとどまることも珍しくありません。
その結果、食欲低下や便通の悪化、消化不良につながる場合があるのです。
また、シニア期には筋肉量が減少しやすくなります。
腹筋や体幹の筋肉が衰えると排便を助ける力も弱くなるため、便秘やお腹の張りがみられることもあります。
ただし、無理な運動を行う必要はありません。
体調に合わせた散歩や適度な遊びを続けることが、胃腸の健康維持にも役立つでしょう。
このような運動量や筋肉量の低下は見落とされやすい老犬の消化不良の原因のひとつです。
病気が隠れている

老犬の消化不良の背景には病気が隠れていることも少なくありません。
たとえば次のような病気では、食欲低下や下痢、嘔吐がみられることがあります。
- 慢性腸症
- 膵炎
- 慢性腎臓病
- 肝臓病
- 腫瘍性疾患(いわゆる癌のこと)
老犬では、症状がゆっくり進む病気も多く、「少し食べる量が減った」「便が少し変わった」といった小さな変化から始まることがあります。
とくに、食事を変えても改善しない、症状を繰り返す、体重が減っているといった場合には注意が必要です。
老犬で症状が長く続く場合は、単なる加齢と決めつけず、病気の可能性も忘れないことが大切です。
老犬の消化不良の改善におすすめの食事

消化不良の老犬への食事は、「胃腸に優しいこと」と「必要な栄養をしっかり摂ること」のバランスがとれていること大切です。
特に、消化不良に病気が関係していない場合や、治療と並行してケアを行う場合には、毎日の食事を見直すことが胃腸への負担軽減につながります。
ここでは、消化不良が気になる老犬で検討したい食事のポイントを見ていきましょう。
高消化性タンパク質を含む食事

タンパク質は筋肉や臓器を維持するために欠かせない栄養素です。
しかし、消化する力が低下している老犬では、タンパク質の量だけでなく「消化しやすさ」も重要になります。
消化吸収しやすいタンパク質を含む食事は、胃腸への負担を抑えながら必要な栄養を補うことに役立ちます。
一般的には、鶏肉や卵などを利用した高消化性フードが選択肢になるでしょう。
また、老犬では筋肉量が低下しやすいため、適切なタンパク質摂取は筋肉量維持の面でも重要です。
ただし、腎臓病を持っている犬ではタンパク質の摂りすぎが腎臓に負担をかけるため注意してくださいね。
脂肪分が過剰でない食事

脂肪はエネルギー源となる大切な栄養素ですが、消化にはある程度の負担がかかります。
とくに、脂肪の消化が苦手な犬や膵炎のリスクがある犬では、脂肪量が多い食事によって消化不良を起こすことも少なくありません。
そのため、愛犬の体質や病気の有無によっては、低脂肪の食事が選択される場合があります。
ただし、脂肪は極端に減らせばよいわけではありません。
脂肪も必要な栄養素の一つなため、犬の状態に合った適切なバランスの食事を選ぶことが大切です。
目安として、一般的なドッグフードでは粗脂肪10%以下のものは低脂肪タイプ、10〜15%程度は標準的、15%を超えるものは脂肪量が多いと考えましょう。
消化不良がみられる場合や膵臓への負担を考慮する場合には、獣医師の判断のもと低脂肪食を処方されることもあります。
適度な食物繊維を含む食事

食物繊維は腸内環境を整え、便の状態を安定させる働きがあり、適量の食物繊維は腸内細菌のバランスを整えるサポートになることがあります。
一方で、食物繊維が多すぎると栄養の吸収を妨げたり、犬によっては便が増えたりすることも珍しくありません。
そのため、「食物繊維が多いほど良い」というわけではなく、愛犬の便の状態を見ながら調整することが大切です。
獣医師の指導下での食事

老犬の消化不良では、食事選びが重要ですが、症状の原因によって適した食事は異なります。
たとえば腎臓病がある犬と膵炎の犬では、必要な栄養管理は大きく変わります。
そのため症状が長引く場合や持病がある場合は、自己判断で食事を変更し続けるよりも獣医師に相談しながら調整しましょう。
病気を考慮した療法食
病気が原因で消化不良が起きている場合には、一般的な老犬用フードではなく、療法食が必要になることも珍しくありません。
療法食は単なる「消化に良いフード」ではなく、病気の管理を目的として栄養バランスが調整されています。
たとえば
- 慢性腎臓病 → 腎臓用療法食
- 膵炎 → 低脂肪食
- 消化器疾患 → 消化性に配慮した療法食
など、病気ごとに必要になる療法食が異なります。
必要に応じて、動物病院で獣医師に相談してみましょう
手作り食

食欲が落ちた老犬では手作り食を検討する飼い主様もいらっしゃいます。
手作り食は嗜好性が高い場合がありますが、栄養バランスが偏りやすい点に注意が必要です。
長期的に与える場合は獣医師やペット栄養管理士などの専門家への相談をおすすめします。
老犬が消化不良のときの食事の与え方

老犬の消化不良を改善するためには、フードの種類だけでなく「どのように与えるか」も大切です。
年齢を重ねると、胃腸の働きや食欲、飲み込む力が変化することも少なくありません。
そのため、愛犬の状態に合わせて食事の回数や形状、温度などを工夫することで、胃腸への負担を減らせる場合があります。
ここでは、老犬の消化をサポートする食事の与え方について見ていきましょう。
消化しやすい老犬向けフードに切り替える

老犬では、若い頃と同じフードでも消化に時間がかかったり、便の状態が変化したりすることがあります。
そのため、必要に応じて老犬用のフードに切り替えて消化をサポートしましょう。
老犬用のフードには、消化吸収に配慮されたものや、年齢による体の変化を考えた栄養設計のものがあります。
ただし、フードを急に変更すると腸内環境が変化して下痢や軟便につながることがあるので、切り替える場合はこれまでのフードに新しいフードを少しずつ混ぜながら7〜10日ほどかけてゆっくり変更しましょう。

食事を少量複数回にする

老犬では、一度にたくさん食べることで胃腸への負担が大きくなることがあります。
とくに食欲が落ちている犬や、食後に吐き戻しやすい犬では、1回あたりの食事量を減らすことも有効な工夫です。
たとえば、これまで1日2回だった食事を3〜4回に分けることで、胃に入る量を減らせるため、消化の負担を軽減することができます。

フードをふやかして与える

老犬では、歯やあごの力が弱くなり、硬いドライフードを負担に感じることも少なくありません。
その場合は、ぬるま湯でフードを柔らかくして与えることで、食べやすくなるでしょう。
また、水分を含ませることで、飲水量が少ない犬の水分摂取を補助できる場合もあります。
便がゆるくなる場合は、量や方法を見直しましょう。

食事を人肌程度に温める

食欲が落ちている老犬では、フードを少し温めるのも試す価値がある工夫の一つです。
ウェットフードや手作り食は温めることで香りが立ち、食事量が減ってきた犬が食べるきっかけになることがあります。
ただし、熱すぎる食事はやけどの原因になるため、人肌程度を目安にしましょう。
電子レンジを使用する場合は、温度にムラができやすいため、よく混ぜてから与えることが大切です。
十分な水分を摂取させる

水分は胃腸の健康維持にも欠かせません。
水分不足になると便が硬くなったり、下痢や嘔吐がある場合には脱水につながったりすることもあり、注意が必要です。
飲水量が少ない犬では、ふやかしたフードやウェットフードを取り入れることで、水分摂取を補助できる場合があります。
とくに老犬では、喉の渇きを感じにくくなったり、自分から水を飲む量が減ったりすることもあるため、日頃から飲水量を意識して確認しましょう。

老犬の消化不良の症状と受診目安

老犬の消化不良では、早めの受診が必要なケースがあります。
次のような症状がみられる場合は、動物病院への相談をおすすめします。
- 下痢や軟便が数日続く
- 嘔吐を繰り返す
- 食欲がない状態が続く
- 水を飲まない
- 元気がない
- 体重が減ってきた
- 血便が出る
- 黒い便が出る
- お腹を痛がる
- 発熱している
老犬では重篤な病気、早急に治療が必要な病気が隠れていることも少なくありません。
早めの検査によって原因が見つかることがあります。
まとめ|老犬が消化不良のときは食事内容と与え方の見直しから始めよう

老犬の消化不良は、加齢による胃腸機能の低下や食事内容の変化、運動量の減少、病気が主な原因です。
食事を見直したり、与え方を工夫することで改善が期待できる場合もあります。
一方で、慢性腸症や膵炎、腎臓病などの病気が背景にあるケースも珍しくありません。
とくに嘔吐や下痢が続く場合、食欲低下や体重減少がみられる場合は注意が必要です。
「年齢のせいだから仕方ない」と考えず、愛犬の変化に早めに気づくことが健康維持につながります。


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