「最近よく体をかいている気がする」
「年齢のせいだからかゆがるのは仕方ないのかな…」
「もしかして、このかゆみは食事のせい?」
「できることなら、食事でもケアしてあげたい」
シニア犬と暮らしている中で、このような悩みを抱えていませんか?
シニア犬のかゆみは、免疫機能の変化や皮膚バリアの低下、さらに食事内容の影響が複雑に関係していることも少なくありません。
とくに近年注目されているのが、食物アレルギーや食事由来の炎症です。
食事由来の炎症とは、体に合わない食材や栄養バランスの乱れによって、体の中で炎症反応が起こりやすくなる状態をいいます。
実は、若い頃は問題なかったフードでも、シニア期に入ってから突然かゆみの原因になることもあるため、注意が必要な状態です。
本記事では、シニア犬がかゆがる原因や食事でできるケアを獣医師が解説しますので、愛犬のかゆみを何とかしてあげたい!という方は、ぜひ参考にしてください。
シニア犬がかゆがるのは食事が原因?それとも年齢?考えられる5つの原因

シニア犬がかゆがる原因は、1つとは限らないことが多いです。
複数の要素が重なってかゆみが起こることが多いため、主にどのような原因があるのか把握しておくことをおすすめします。
- 老化による変化
- 乾燥によるかゆみ
- アレルギーによるかゆみ
- 常在菌による皮膚トラブル
- 体の内側の不調
では、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
老化による変化

シニア期は、皮膚のバリア機能が低下し、外からのわずかな刺激でもかゆみを感じやすくなります。
これは、加齢の影響で皮膚の新陳代謝(いわゆるターンオーバー)が遅くなることが理由です。
古い角質が皮膚の表面に残りやすいので、皮膚の状態は不安定になります。
また、シニア犬では皮脂腺の機能も低下しているため、成犬期よりもかゆみが起きやすいのです。
乾燥によるかゆみ

加齢による変化でかゆみを感じやすいうえに、室内の乾燥が重なると、皮膚のバリア機能はさらに弱まりやすい状態になります。
結果としてフケや粉吹き、かゆみが起こるので、「冬になるとかゆがる」「エアコン時期に悪化する」といった場合は、乾燥の関与も疑ってみましょう。
アレルギーによるかゆみ

食物アレルギーはシニア犬で増える傾向があります。
ポイントは、これまで問題なく食べていたものでも、長く食べ続けるうちにアレルギーが出ることがあるという点です。
同じタンパク質を繰り返し食べる中で、体の免疫がそれを異物と判断し、かゆみなどの反応が起こるようになります。
これは加齢に伴う体の変化の中でみられるもので、特別に珍しいものではありません。
また、若い頃は軽度だったアトピーが、シニア期になって悪化し、かゆみとして目立ってくるケースもあります。
加齢により皮膚のバリア機能が低下し、外からの刺激に対して敏感になるためです。
常在菌による皮膚トラブル

シニア犬では、皮膚バリア機能や免疫機能の低下により、皮膚にもともといる細菌や酵母菌(常在菌)が増えやすくなります。
これらの菌が増殖することで、膿皮症などの細菌感染や、マラセチアの皮膚炎によるかゆみが起こることも少なくありません。
いずれも外から新たに感染するというより、皮膚環境の変化によって常在菌のバランスが崩れることが背景にあります。
病気

シニア犬では、皮膚そのものだけでなく、ホルモンや内臓の病気が皮膚に影響することも増えてきます。
これは加齢によってホルモンを分泌する臓器の働きが変化したり、長年の負担の積み重ねによって内臓機能が低下したりするためです。
たとえば、
- 甲状腺機能低下症
- クッシング症候群
- 性ホルモン失調
- 肝臓病
- 腎臓病
- 心臓病
などが挙げられ、上記は皮膚のかゆみや脱毛といった症状として現れることがあります。
食事がシニア犬のかゆみに影響する理由

シニア犬のかゆみは、皮膚だけの問題ではなく、体の内側の状態とも深く関係しています。
とくに食事は、皮膚・免疫・腸内環境に影響する大切な要素であり、かゆみの原因や悪化に関わることも珍しくありません。
ここでは、食事がシニア犬のかゆみに影響する理由を見ていきましょう。
皮膚と栄養は密接に関係する

皮膚は食事の影響を受けやすい組織です。
タンパク質は皮膚の材料となり、脂質は皮膚のバリア機能を支えています。
そのため栄養バランスが崩れると、
- 皮膚の再生低下
- 炎症の増加
- かゆみの悪化
につながります。
もしかしたら、「総合栄養食を食べているから栄養は問題ない」と思われるかもしれません。
もちろん総合栄養食は基本的な栄養バランスが整うよう作られていますが、製品ごとに使われている原材料や脂質バランス、タンパク源などは異なります。
また、体質によって“合いやすい・合いにくい”があるため、同じフードでも皮膚の状態に差が出ることがあるのです。
さらに、トッピングの量が多かったり、おやつの割合が増えすぎたりすると、知らないうちに栄養バランスが偏ってしまうこともあります。
消化力の低下

シニア犬では、加齢により消化能力が低下します。
その結果、同じフードでも栄養の吸収効率が落ち、体でうまく利用されにくくなるのです。
さらに、未消化の成分は腸内環境を乱す原因となります。
こうした変化により免疫バランスが崩れ、かゆみにつながることもあるとされています。
腸内環境の乱れ

腸は「免疫の司令塔」ともいわれるほど、体の健康と深く関わっています。
しかし、シニア犬は年齢に伴う変化により腸内環境が乱れやすい状態です。
腸内環境が乱れると免疫のバランスが崩れてしまうので、以前よりもアレルギー反応が起こりやすくなります。
具体的には、徐々に以下のような変化が起こるため、一度食事の見直しを検討してみましょう。
- 若い頃より活動量が減る
- 食事の好みが変わる
- 食べやすさを考えてトッピングが増える
- 生活環境の変化を感じやすくなる
このような腸と皮膚の関係は「腸-皮膚相関」と呼ばれています。
食事の見直しは、腸内環境の改善だけでなく、かゆみの改善にもつながることもあります。
シニア犬のかゆみ対策におすすめの食事ポイント

シニア犬のかゆみ対策では、食事内容の見直しが重要なポイントになります。
わたしたち飼い主が毎日選ぶフードが、皮膚のかゆみに大きく影響するのです。
ここで詳しく解説していくので、かゆがるシニア犬の食事の見直しの参考にしてください。
避けたい食材・フード

フード選びでは「何を選ぶか」と同じくらい、「何を避けるか」が重要です。
下記に、できるだけ避けたい食材やフードの特徴をまとめてみました。
- 原材料が不明確なもの(「肉類」など曖昧な表示)
- ペットフードの栄養基準(AAFCOやFEDIAFなど)を満たしていないフード
- 長期間同じタンパク質(例:ずっと鶏肉のみ)
原材料が曖昧なフードでは、鶏や牛など、どのタンパク質を摂取しているか正確に把握することが難しくなります。
その結果、食物アレルギーが疑われた場合に原因食材を特定しにくくなるため、注意が必要です。
さらに、AAFCOやFEDIAFなどの栄養基準を満たしていないフードは、必要な栄養バランスが十分でない可能性があります。
主食として続けると、皮膚の再生やバリア機能に必要な栄養が不足してしまうことも珍しくありません。
また、同じタンパク質を長期間与え続けると、体がその成分に反応しやすくなることがあります。
シニア犬では、これまで問題がなかった食事でもかゆみをはじめとした食物アレルギーの症状が出ることがあるため
「今のフードで大丈夫」と思い込まず、一度立ち止まって見直すことが大切です。
特定の食材だけに偏らず、栄養バランスのとれた食事を意識することが、シニア犬のかゆみ対策の基本になります。
積極的に取り入れたい栄養素

次に、皮膚の健康維持をサポートする栄養素を意識してみましょう。
食事の質を上げることで、かゆみの出にくい体づくりにつながります。
以下は、皮膚の健康維持のために特に意識したい栄養素です。
- オメガ3脂肪酸(EPAやDHA):皮膚の炎症を抑える(青魚、サーモンオイルなど)
- ビタミンE:抗酸化作用で皮膚を守る(かぼちゃ、植物油など)
- 高品質なタンパク質:皮膚の再生や修復に不可欠(鶏肉、白身魚など)
- 食物繊維:腸内環境を整える(さつまいも、かぼちゃ、海藻など)
また、これらを取り入れる際は「少量から」「継続して」がポイントです。
一度に多く与えるのではなく、毎日の食事に少しずつ加えることで負担なく続けられるでしょう。
なお、具体的な与え方や量の目安、トッピング時の注意点については、次の「トッピングの工夫」で詳しく解説します。
【今すぐできる!】かゆがるシニア犬のための食事の見直し方法

シニア犬がかゆがるときの対策というと、薬や治療を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、毎日の食事を見直すことも、とても重要なケアのひとつです。
食事は毎日続くケアだからこそ、少しの見直しが大きな差になります。まずは無理なくできるところから始めてみましょう。
フードの原材料・成分をチェックする

最初に行いたいのは、普段与えているフードのパッケージの表示を確認し、中身を知ることです。
原材料は、「チキン」「サーモン」など、タンパク源がはっきりしているフードを選ぶようにしましょう。
「肉類」などの曖昧な表示は、アレルゲンの特定が難しくなるため避けたほうが管理がしやすくなります。
また、成分表の脂質の数値をチェックしてみるのもおすすめです。脂質の不足や摂りすぎ、種類の偏りなどが、皮膚の健康に影響を与えることがあるからです。
もちろん、最適な脂質量には個体差があるため一概に「この脂質の数値ならいい」とは言えません。
ですが、原材料表記と合わせて成分表を見るクセをつけておくことで、愛犬に合うフード・合わないフードの傾向をとらえやすくなります。
フードの切り替えの進め方

フードの急な変更は下痢や嘔吐につながることがあるため、一気に行わないことが大切です。
消化器への負担を減らすために、様子をみながら7〜10日ほどかけてゆっくり切り替えましょう。
以下のように、段階的に進めると安心です。
- 1日目は旧フード90%+新フード10%
- 5日目は半分ずつ
- 10日目で完全に切り替え
これまではフードの切り替えでお腹を壊すことがなかったような犬でも、シニア期になると急な切り替えが負担となることがあります。慎重に進めてあげましょう。
かゆみに配慮したフードを選ぶ

まずは、最近与え始めた食材やフードを振り返ることが大切です。
新しく取り入れたもので、かゆみが出ていないかを確認しましょう。
疑わしい食材がある場合は、一度中止して様子を見ることも一つの方法です。
また、低アレルゲン設計のフードも選択肢になりますが、急にいろいろ試すよりも一つずつ見直すことが大切です。
なお、食物アレルギーが疑われる場合には「除去食試験」という方法があります。
これは一定期間、決まった食事のみを与えて反応を見る方法です。
ただし、正しく行わないと判断が難しくなるため、獣医師の指導のもとで行うことをおすすめします。
自己判断で進めるのではなく、動物病院で相談しながら進めるようにしましょう。
トッピングの工夫

「食事を見直したいけれど、何をどう足せばいいの?」と迷う方も多いと思います。
まずは、いつものフードに少量だけトッピングを加える方法から始めると取り入れやすいでしょう。
ただし、体に良さそうな食材をたくさん組み合わせると、かえって栄養バランスが偏ってしまうことがあります。
そのため、トッピングは1〜2種類を少し足す程度にとどめると、栄養バランスも崩れにくいでしょう。
また、持病がある場合や、長期的に食事内容を調整したい場合には、動物病院で栄養バランスを考慮した食事内容について相談しながら進めるとより安心です。
この後は、トッピングについて具体的なポイントと注意点を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
オメガ3脂肪酸(青魚、サーモンオイルなど)

サーモンオイルをフードに数滴加えたり、味付けされていないサンマやアジなどの青魚を加熱してトッピングする方法があります。
ほぐした青魚をトッピングする量の目安量は以下を参考にしてください。
- 小型犬:小さじ1程度
- 中型犬:小さじ1〜2程度
- 大型犬:大さじ1程度まで
上記を目安に、少量から始めてみましょう。
ただし、青魚は脂質が多いものもあり、与えすぎるとお腹を壊したり、カロリー過多につながることも少なくないため、様子をみながらトッピングの量を調整してくださいね。
さらに、魚の骨が残っていると危険なため、与える前にしっかり確認するようにしましょう。
また、オメガ3脂肪酸を取り入れる方法として、貝由来成分を含む犬用サプリメントも使用されることがあります。
サプリメントは手軽に取り入れやすく、調理の負担を減らせることが大きなメリットです。
ビタミンE(かぼちゃ、植物油など)

やわらかく加熱したかぼちゃを少量、いつものフードに混ぜる方法があります。
かぼちゃは自然な甘みがあり、シニア犬でも食べやすい食材です。
かぼちゃをトッピングする目安量は以下になります。
- 小型犬:小さじ1程度
- 中型犬:小さじ1〜2程度
- 大型犬:大さじ1程度まで
植物油を使う場合は、オリーブオイルやサラダ油をまずは数滴程度から始めます。
体調や便に問題がなければ少しずつ調整できますが、とくに小型犬では小さじ1/2程度までを目安に、少量を継続することが大切です。
また、植物油はカロリーも高いため、愛犬の体格や持病に合わせて、動物病院で相談しながら量を調整するようにし、必要に応じてビタミン剤の投与も検討しましょう。
高品質なタンパク質(鶏肉、白身魚など)

ゆでた鶏むね肉やささみ、白身魚を、少量ほぐしてフードに混ぜる方法があります。
以下の量を目安に始めると取り入れやすいでしょう。
- 小型犬:ひと口〜大さじ1程度
- 中型犬:大さじ1〜2程度
- 大型犬:2〜3大さじ程度
味付けはせず、骨や皮を取り除くことが大切です。
また、トッピングの割合が増えすぎると、総合栄養食とのバランスが崩れるため、多くても主食の1割以内を目安にトッピングしてくださいね。
食物繊維(さつまいも、かぼちゃなど)

加熱したさつまいもやかぼちゃを少量加えることで、食物繊維を取り入れやすくなります。
さつまいもやかぼちゃをトッピングする量の目安は以下です。
- 小型犬:小さじ1程度
- 中型犬:小さじ1〜2程度
- 大型犬:大さじ1程度まで
上記を目安に、便の状態を見ながら調整しましょう。
食物繊維を急に増やしすぎると、下痢や便秘、お腹の張りにつながることがあるので適度な量にしてくださいね。
シニア犬がかゆがるときに病院を受診すべきサイン

シニア犬がかゆがるときは、様子を見ていていいのか迷う場面もあると思います。
次のような変化がある場合は、早めの受診を検討しましょう。
- 強いかゆみで夜も眠れない
- 広い範囲の脱毛がある
- 耳の赤みやにおいがある(外耳炎)
- 慢性的な下痢や軟便が続く
皮膚とお腹の症状が同時にみられる場合は、食物アレルギーの可能性が高まります。
ただし、アトピーや寄生虫、ホルモン疾患などとの見極めも必要となるため、早めに動物病院を受診してくださいね。
シニア犬がかゆがるときの食事以外のケア

シニア犬がかゆがるときの対策では、食事やサプリメントといった体の内側からのケアだけでなく、下記のような予防やスキンケアといった体の外からのケアも欠かせません。
- ノミ・ダニ予防(定期的な投薬)
- アレルゲン対策(掃除機、寝具の洗濯)
- 薬用シャンプー(獣医師の指示のもと、必要に応じた適切な頻度で実施)
- 保湿ケア(シャンプー後の保湿剤や日常的なスキンケア)
上記の中でも、とくにシニア犬の皮膚は乾燥しやすいため、保湿の積み重ねが皮膚状態の安定につながります。
食事と生活環境の両方を整えることが、かゆみ対策の近道になるでしょう。
まとめ|シニア犬がかゆがるときは食事も見直そう

シニア犬が体をかく姿を見ると、「年齢的に仕方ないのかな」と感じることもあると思います。
しかし実際には、シニア犬がかゆがる背景には、食事、免疫機能、腸内環境、ホルモンや内臓の変化など、さまざまな要因が関係していることがあります。
とくに食物アレルギーは、若い頃だけの問題ではありません。
長年同じフードを食べていても、シニア期になってから突然かゆみが出るケースもあります。
だからこそ、「年齢だから」と決めつけず、毎日の食事内容を一度見直してみることも大切です。
フードの種類を見直したり、少量のトッピングを工夫したりと、できることは意外とたくさんあります。
もちろん、すぐに大きく変える必要はありません。
愛犬が快適に過ごせる時間を少しでも増やすために、できることから始めていきましょう。


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