老犬になると、頑なにご飯を食べない時もありますよね。
好きなものなら食べてくれるという場合は、食べないことよりは嬉しいことですが、「栄養バランスが心配だけど、食べられるものを与えてもいい?」と迷うこともあるのではないでしょうか。
実際、私も高齢の愛犬たちと暮らしていたので、「何も食べないよりは何か口にしてもらいたい」という気持ちはよくわかります。
愛犬が一口でも食べてくれたら、それだけで嬉しくて、同時に少しほっとしませんか?私はそうでした。
とはいえ、何を食べさせればいいかは状況によって異なり、老犬の状態によっては注意が必要です。
そこでこの記事では、ペットフーディストや動物介護士の私が、老犬が食べない時、食べられるものを与えてもいいのか、注意点とあわせて解説します。
【結論】老犬が食べない時、食べられるものを与えていいかは状況によって異なる

結論から言うと、老犬が食べない時に食べられるものを与えていいかは状態や状況によって異なり、良いともダメとも言えません。
もちろん、総合栄養食や療法食をきちんと食べられることが理想です。
しかし、老犬になると、さまざまな原因によってこれまで通りの食事を食べられなくなることもあります。
食べない状態が続くと、体に必要なエネルギーを十分にとれず、体力や筋肉量の低下、免疫力の低下につながります。
特に老犬は若い犬に比べて体力の余裕が少なく、食事量の低下が全身状態に影響しやすいので注意が必要なのです。
老犬が食べない時、食べられるものを優先したほうがいい場合

では、老犬が食べない時、食べられるものを与えていいのはどのような状況なのでしょうか。
ここでは、食べられるものを優先したほうがいい場合について見ていきましょう。
総合栄養食を食べない状態が続いているとき

老犬が総合栄養食を食べない状態が続いている場合は、食べられるものを一時的に優先したほうがいいこともあります。
どんなに栄養設計が優れていても、老犬が実際に食べられなければ、必要なエネルギーや栄養を体に取り込むことはできません。
食べない状態が続くと、体は不足したエネルギーを補うために、脂肪だけでなく筋肉も分解して使おうとします。
老犬はもともと筋肉量が低下しやすいため、さらに筋肉が落ちることで活動量も低下しやすくなります。
動かなくなれば食欲も落ち、さらに食事量が減るという悪循環につながることも珍しくありません。
また、体を動かすためのエネルギーも不足することで体力が落ち、体調を崩した時や病気の治療中に回復する力が低下して、症状が長引いたり悪化してしまうこともあるのです。

入院中や治療中に食事量を確保したいとき

入院中や病気の治療中に、獣医師の管理のもとで、食事量を確保するために食べられるものを優先することもあります。
治療中は、炎症や感染、組織の修復などで、普段より多くのエネルギーや栄養が必要になります。
そのため、食べない状態が続くと治療を受けるための体力を保ちにくくなり、回復にも影響してしまうことも珍しくありません。
実際、私の腎臓病の愛犬が入院した時、あまりにも食べない状態が続いたため、動物病院側が一般食やおやつを食事として出したり、「好きなものを持ってきてください」と言われました。
退院した後も、療法食をほとんど食べなかったので、食べてくれるものを与えるように指示され、食事量を確保することがどれだけ大切なのかを身をもって経験した出来事です。
病気で栄養制限を指示されている場合、治療の一環として食事管理が重要ですが、獣医師の判断で一時的に食べられるものを与えていいこともありますよ。
獣医師から好きなものを食べさせてよいと言われているとき

病気が進行している場合や終末期では、獣医師から「好きなものを食べさせてあげてください」と言われることがあります。
これは、病気の治療や栄養管理を優先する段階ではなく、老犬が少しでも食べられることや、穏やかに過ごせる時間を大切にする段階に入っているからです。
そのため、獣医師から許可が出ている場合は、普段控えていた食べ物を与えても問題はありません。
ただし、これは「犬が絶対に食べてはいけないものも与えていい」という意味ではないので、その点は注意しましょう。

ちょっと待って!老犬はご飯を「食べない」のではなく「食べられない」のかも

老犬が食べない時は、食べられるものを与えることが必要な場合もあります。
ただし、その前に考えたいのが、愛犬は本当に「食べたくない」のか、それとも「食べたいのに食べられない」のかということです。
ここでは、老犬がご飯を食べない時に、見落としやすい原因について見ていきましょう。
フードの匂いや味が好みではない

老犬がご飯を食べないのは、フードの匂いや味が好みに合わなくなっているのかもしれません。
老犬になると嗅覚が衰えるため、これまで食べていたフードでも匂いを感じにくくなります。
犬は匂いで食欲が刺激されるため、匂いが感じられないと食欲が落ちるということはよくあることです。
特に開封してから時間が経っているドライフードは、酸化などの劣化によって風味が落ちるので、さらに食べなくなってしまうでしょう。
また、加齢によって感情や行動などのコントロールに関わる前頭葉の働きが低下すると、食の好みが変わったりこだわりが強くなったりすることもあります。

フードの形状が食べづらい

フードの形状が食べづらくなってきたことで、食べられないこともあります。
老犬は加齢によって噛む力や飲み込む力が低下していくため、それまで問題なく食べられていたフードが負担になることも珍しくありません。
ドライフードの場合、粒のサイズが大きい、硬くて噛みにくい、乾燥していて飲み込みにくいといった問題も起きやすくなります。

口の中の痛みで食べられない

老犬がご飯を食べない時は、口の中の痛みが原因で食べられなくなっている可能性も考えましょう。
特に老犬では歯周病が多く見られ、歯ぐきの炎症や歯のぐらつき、歯根の感染などによって、食べるたびに痛みを感じているということも少なくありません。
また、「ウェットフードなら食べやすいだろう」と思っても、フードが熱かったり冷たかったりすれば、口の中の温度との差が刺激となり、痛みを感じて食べられないということも起こります。
食器が気に入らない

老犬がご飯を食べられなくなっているのは、食器が気に入らないのかもしれません。
老犬になると、加齢によって脳の働きが低下して、我慢がしにくくなります。
そのため、これまで我慢できていた食器でも、食べづらさや違和感からご飯を食べなくなることも珍しくありません。
たとえば、
- 食器の縁にヒゲが当たる
- 食器が深すぎて顔を入れるのが怖い
- 食器が浅すぎてご飯が逃げる
- 食器の素材が嫌
など、食器ひとつとっても、さまざまなことが考えられます。
実際、私の愛犬は食器が深いとご飯を食べられず、平べったいお皿に変えたら食べるようになったということもありました。
また、知人の老犬チワワちゃんも、食器からは食べないけど、トレーやランチョンマットに直に置くと食べるなど、何を嫌だと感じるかは老犬によって異なります。
首や腰が痛くて食器まで顔を下げられない

首や腰の痛みで、食器まで顔を下げられなくなっていて、ご飯を食べられないという可能性も考えてみましょう。
特に老犬では、変形性関節症や脊椎の病気などによって、低い食器まで顔を下げたり、前のめりの姿勢を保ったりすることが負担になることがあります。
足腰が弱って立っていられない

食べたい気持ちはあっても、足腰の衰えによって立っていることがつらく、ご飯を食べられないということも珍しくありません。
特に老犬では、筋力の低下や関節の痛み、神経の衰えなどによって、食事中に立った姿勢を維持すること自体が負担になります。
また、滑りやすい床では足に力を入れにくくなるため、さらに食べづらさが増してしまうこともあります。
介助がないと食べられない

老犬になると、介助がないと食べられないということも普通に起こります。
たとえば、食器の前までは行けても、舌ですくう力が弱くなってうまく口に入れられなかったり、視力や嗅覚の衰えでご飯がどこにあるのかわからないということも珍しいことではないのです。
また、食べ始めても途中で疲れてしまい、最後まで食べ続けられないこともあります。
見た目は衰えたように見えないことも多いため、食欲がないと勘違いされてしまうことも少なくありません。

認知症(認知機能不全)で食べ始められない

老犬では、認知症によって、ご飯を食べ始められないということもあります。
犬の認知症は10歳を過ぎたころから発症しやすくなりますが、認知症になると食欲旺盛になることもあれば、逆にご飯ということを認識できなかったり食べ方がわからなくなってしまって食べられないことも。
実際、私の愛犬の1匹は17歳で認知症になり、自分では食べられなくなってしまったので介助が必要でしたよ。
認知症になると、食べたい気持ちはあるのに食べる行動につながらないということも少なくありません。
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老犬が食べない時、食べられるものを与えるときの注意点

老犬がご飯を食べない時、食べられるものを優先することもありますが、与えるときには注意しなければいけないこともあります。
愛犬の体に負担をかけないためにも、気をつけたいポイントを見ておきましょう。
まずは獣医師に相談する

老犬がご飯を食べない時は、食べられるものを与える前に、まず獣医師に相談しましょう。
ご飯を食べない原因は老化によるものだけでなく、病気や痛み、口内トラブルなどさまざまです。
「好きなものなら食べられるから大丈夫」と思いがちですが、体調が悪くても、好きなものや嗜好性の高いものだけは食べることも珍しくありません。
また、持病がある犬や栄養制限の指示がある犬では、自己判断で食べられるものを与えると状態を悪化させてしまうことにもつながります。
そのため、まずは獣医師に老犬の状態を確認してもらうことが大切です。
犬が食べてはいけないものは絶対に与えない

愛犬が食べられるものを与える場合でも、犬が食べてはいけないものは絶対に与えないようにしてください。
- ネギ類(玉ねぎ、青ネギ、白ネギ、長ネギ、万能ねぎ、わけぎ、あさつき、小ネギ、エシャロット、ニラ、ラッキョウ、リーキなど)
- ぶどう・レーズン
- 未熟なプルーン類(プルーン、プラム、すもも)
- チョコレート・ココア・コーヒー
- キシリトール
これらは、犬が中毒を起こしたり、場合によっては命にかかわることもあるものです。
また、ネギ類などは、一緒に調理されて成分が溶け出しているだけで犬に悪影響を及ぼすおそれがあり、あとから具材を抜けば大丈夫というものではないため、十分に注意しましょう。
総合栄養食に戻すことも意識する

食べられるものを与えるときでも、総合栄養食へ戻すことを意識しましょう。
食べてくれるものが一般食やおやつ、手作り食だけでは犬に必要な栄養が偏ってしまうこともあります。
もちろん、総合栄養食をまったく食べられないのに無理に切り替える必要はありませんが、「今は食べることを優先する時期なのか」「少しずつ元の食事へ戻せそうか」は、愛犬の状態を見ながら判断していくことが大切です。
私の愛犬の場合、半年ほど一般食やおやつ、手作り食だけしか食べなかった時期もありましたが、徐々に自然と総合栄養食のフードを食べてくれるようになりました。※月に1~2回の定期的な通院や検査あり
すべての老犬に当てはまるわけではありませんが、一時的に食べられるものだけの時期があっても、そのままずっと戻れないとは限りませんよ。
まとめ|老犬が食べない時、食べられるものを与えていいこともある

老犬が食べない時、食べられるものを与えていいかは老犬の状態によって異なります。
また、食べたいのに食べられないのか、食欲が落ちているのかにもよって対応は違ってくるでしょう。
まずは、フードの内容や与え方を見直し、愛犬が食べられない原因が隠れていないか確認することが大切です。
そのうえで、獣医師と相談しながら必要に応じて食べられるものを取り入れ、老犬が無理なく食事を続けられる方法を探していきましょう。
参考文献
AAHA「2021年AAHA栄養・体重管理ガイドライン」
J Vet Sci「Nutrition and aging in dogs and cats: assessment and dietary strategies」
frontiersin「Canine Cognitive Dysfunction and Alzheimer’s Disease – Two Facets of the Same Disease?」
scientific reports「Evaluation of cognitive function in the Dog Aging Project: associations with baseline canine characteristics」


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